麦わらのすき込みと焼却が雑草発生に及ぼす影響を、アレロパシーを中心として解析した。その結果、①現地水田でのすき込みは、雑草抑制において焼却に優る効果を示した。また、水稲の生育に対し、分げつを抑制したものの登熟歩合を高めて増収の傾向を示した。さらに、ポット試験において再現性について確認したところ、オオムギ、コムギいずれの麦わらをすき込んだ場合にも、各種の水田雑草に対して強い抑制効果が認められた。すき込みによる雑草発生の抑制効果は経時的に低下したが、水稲収穫時期の秋頃から翌春の麦作の出穂期頃まで残効が確認できた。この場合、麦わらの処理量としては実際の栽培現場で施用されるレベルの20~40kg/aで雑草抑制効果が認められた。この結果から、麦わら処理は焼却よりもすき込みが優れていることが示唆された。②麦わらから浸出する成長抑制物質の存在を実証するために、アレロパシー活性が強いとされるオオムギわら並びにその焼却灰の浸漬水を用いて検定植物 の種子発芽を調査した結果、わら浸漬水は、わら焼却灰浸漬水に比較して顕著な発芽抑制効果を示した。この場合、浸漬水への土壌添加の有無にかかわらず同様の傾向を認めた。これらのことから、水田湛水後に麦わらから速やかに浸出する多感物質の関与が考えられた。そして、オオムギのわらと焼却灰の浸漬水中に含まれるフェノール性物質の(±)-2-フェニルプロピオン酸、3-フェニルプロピオン酸、フェルラ酸、没食子酸 (無水) およびp -クマル酸の 5種類の関与を確認し、中でも (±)-2-フェニルプロピオン酸の関与が強く示唆された。③麦わら焼却時の温度は、ウインドロウから25㎝程度までの土表面では100℃以上になるが、土壌中では埋土種子を失活させる高温を継続する範囲が限られていたことから、麦わら焼却は,雑草抑制範囲が限定的で現場技術としての実用性が低いことが示唆された。
|