多収を示す普通ソバ大粒系統「芽系32号」の栽培条件が収量および収量構成要素に及ぼす影響を解明するために北海道の主要品種である「キタワセソバ」を比較対象として栽植密度や施肥量などの条件を変えて栽培試験を実施した。今年度は生育期間中の気象条件が良好で、10aあたり300kg以上の収量を示す試験区が多数認められ多収条件での試験になった。過去の栽培試験研究と同様に収量は概ね早刈区<標刈区<遅刈区の順に増加した。 「芽系32号」の面積当たり小花数と花房数、花房当たり小花数は「キタワセソバ」よりも少なかった。逆に「芽系32号」の受精率および登熟歩合は「キタワセソバ」よりもやや高かった。これらのことから「芽系32号」は「キタワセソバ」と比較して小花数は少ないが受精率と登熟歩合はやや高く、結果として両者の着粒数に明確な差が認められず、「芽系32号」の多収性は千粒重の差が直接反映されていると考えられた。 訪花昆虫を制限した条件では大粒による受精率の低下による減収をある程度「芽系32号」の大粒性が補償していることが確認された。一方、前年度の閉鎖系試験の結果を参考に今年度は訪花昆虫の数を大幅に増やしたが、解放系よりも受精率は低いままであり閉鎖系の最適な条件設計が今後の課題として残された。 「芽系32号」および「キタワセソバ」ともに標準窒素施肥量0.18kg/aに対して2倍窒素施肥(0.36kg/a:多肥)することにより収量の増加が認められた。窒素は追肥よりも元肥で施肥する方が効果的であった。2倍窒素施肥でも施肥量よりも多くの窒素を吸収することが明らかになった。 現在、大粒性に半矮性を導入したF4世代の素材37点の育成を進めており、新たな研究材料として素材開発を進める。
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