北海道におけるハスカップの野生遺伝資源を対象に、同一ゲノムを重複させたハスカップの倍数体(本研究では、同一ゲノムを重複させて倍数体のことを“同質遺伝子倍数体と呼ぶ”)作出について検討を行った。北海道には、二倍体と四倍体のハスカップが自生し、二倍体は主に北海道東部に分布していることが報告されている。倍数体作出の材料を二倍体に求め、北海道東部におけるハスカップの分布状況について調査を行った。採取許可を得たのちに、白糠町、厚岸町、浜中町、根室市、別海町等のハスカップ野生集団からサンプルを収集し、倍数性についてフローサイトメーターで解析した。その結果、根室市で四倍体集団が見出されたほか、厚岸町、浜中町、根室市において、二倍体と四倍体が混在する集団がみつかった。白糠町、厚岸町、浜中町、別海町では、二倍体のみで構成されているハスカップ野生集団を特定することができた。 同質遺伝子倍数体の作出のために、厚岸町のハスカップ二倍体集団から果実を採取し、種子を得た。これらの種子を無菌播種し、コルヒチン処理の材料とした。これまでのコルヒチン処理実験では、ハスカップの実生全体をコルヒチン液に浸して処理を行うと、根がダメージを受けて植物体が枯死してしまう問題点があった。そこで、無菌的に誘導した実生の根をゲランガムで固化した培地中に挿して根を保護し、培地上にコルヒチン液を入れてシュート部にコルヒチンを処理する方法を考案した。コルヒチン処理に供試する実生は、本葉展開時に本葉を切除し、脇芽を誘導したものを用いた。コルヒチン処理後、腋芽が成長したものから、腋芽ごとに識別してフローサイトメーターで倍数性を判定した。その結果、二倍性、二倍性と四倍性のキメラ、四倍性のシュートが得られた。同一実生から得られた二倍性のシュートと四倍性のシュートを継代することで、数系統の同質遺伝子倍数体を作出することができた。
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