研究課題/領域番号 |
16K07588
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
木庭 卓人 千葉大学, 大学院園芸学研究科, 教授 (40170302)
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研究分担者 |
菊池 真司 千葉大学, 大学院園芸学研究科, 助教 (80457168)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | イチゴ / 染色体 / FISH法 / BACクローン / 核型 / ゲノム情報 / 連鎖群 |
研究実績の概要 |
イネやシロイヌナズナといったモデル植物から多くの栽培植物を中心としてゲノム解析が行われ、ゲノム情報が明らかとなって来ている。しかし、それらの情報と遺伝子の担架体である染色体との関係は不明のままである。イチゴ属(Fragaria)では二倍体から十倍体まで倍数体シリーズとして分化している。これまでこれらの種について、中期染色体を用いた染色体の形態やrDNAの位置による核型の比較が行われてきたが明瞭な識別ができていない。そこで本研究ではイチゴの基本染色体数であるn=7のそれぞれの染色体に特異的な配列を含むBACクローンを用いて、 FISH(Flurorescence in situ hygiridization )法により二倍体イチゴにおける染色体の識別と種間の核型の比較を行い、染色体情報とゲノム情報による連鎖群の統合を試みることとした。プローブとして用いたBACクローンは、八倍体栽培イチゴの祖先種の一つであると推定されている二倍体種F. vescaのゲノム情報により、それぞれの連鎖群に特異的に含まれていることが明らかとなった配列をクローン化したものである。まず、F. vescaともうひとつの八倍体栽培イチゴの祖先種であると推定されているF. iinumaeの二つの二倍体種でBAC FISHを行ったところ、それぞれの種において7つの全ての染色体の末端を標識することができた。これにより、7つの染色体を標識で識別することが可能となったのみならず、これら2種間の染色体の同祖性が明らかとなった。一方、前中期染色体におけるクロマチンの凝縮分布の違いによる染色体の物理的特徴を明らかにすることができた。前中期染色体上にBAC FISHによる染色体マーカーを位置づけたことにより、これらの情報を合わせることによって、二倍体イチゴにおける核型と連鎖群との対応関係が明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
イチゴの野生種の染色体は、非常に小さくそれぞれを識別することが困難であった。それは、これまでの観察が中期染色体を用いたものであり、全ての染色体がほぼ同じサイズであった。本研究では、前中期染色体を観察することにより、染色体特有のヘテロクロマチン凝縮部位を検出することができ、それにより7本の染色体を識別することが可能となった。一方、イチゴでは野生種Fragaria vescaを対象としてゲノム解析が行われ、その情報が公開されている。そこで、本研究は、ゲノム情報に基づく連鎖群と染色体情報との統合を図ったものである。これまでに、F. vescaとF. iinumaeの前中期染色体の核型を明らかにするとともに、その染色体に連鎖群特異的な、連鎖群の末端に位置するBACクローンを位置付けることに成功した。これにより、連鎖群と染色体との関係を明確にすることができた。
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今後の研究の推進方策 |
1)染色体の識別に用いたBACクローンをプローブとして八倍体栽培イチゴの染色体にFISHを行い、期待通りにそれぞれ8対存在するかどうかを検証する。8対以下、あるいは8対以上孫坐する場合は、染色体異常、ゲノム再編成が生じていることが予想される。 2)GISH(Genomic in situ hybridization)法により、祖先種と推定されているF. vescaとF. iinumaeのゲノムDNAをプローブとして八倍体イチゴにハイブリダイズすることにより、56本の染色体のうち、それぞれ何本がF. vescaとF. iinumaeに由来するのかを検証する。また、相互転座の有無についても検証する。
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次年度使用額が生じた理由 |
年度末の最終的な支払い計算の中で、わずかながら次年度使用額が出てしまった。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度の物品費に繰り入れる。
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