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2016 年度 実施状況報告書

植物ホルモンの網羅的分析によるアスパラガスの休眠生理の解明

研究課題

研究課題/領域番号 16K07590
研究機関新潟大学

研究代表者

児島 清秀  新潟大学, 自然科学系, 教授 (70271161)

研究分担者 元木 悟  明治大学, 農学部, 専任准教授 (80502781)
研究期間 (年度) 2016-04-01 – 2019-03-31
キーワードアスパラガス / 内生植物ホルモン / オーキシン / アブシジン酸 / サイトカイニン / ジベレリン / ジャスモン酸 / 休眠打破
研究実績の概要

アスパラガスが萌芽するためには休眠打破が必要である。しかし、近年の地球温暖化の影響で休眠に必要な低温が得られず、春に萌芽が不十分となる障害が生じており、アスパラガスの生産性向上の為に植物ホルモンによる萌芽の制御機構の解明が喫緊の課題である。アスパラガスの内生植物ホルモンと温度との関連を、網羅的に分析し、萌芽性の制御機構を生理学観点から解明する。本研究では萌芽期のアスパラガスを用いてオーキシン(IAA)、アブシジン酸(ABA)、サイトカイニン類(iP、Z)、ジベレリン類(GA1、GA4)、ジャスモン酸類(JA、MeJA)の定量分析を行った。
植物材料は異なる成長ステージ毎に採取したアスパラガス`ウェルカム´を使用した。アスパラガスはりん芽部分から頭部、2cm部、中部、基部の4部位に切断して保管した。それぞれのサンプルを摩砕して80%エタノールを加え、安定同位体で標識した試薬を内部標準物質として加えた後、減圧濃縮や濾過、溶媒分画といった作業を経て、抽出・精製した。さらに、遠心乾燥した後、HPLCを用いて各植物ホルモンの分取を行った。最後にLC/MSを用いて内部標準法により各植物ホルモンの定量分析を行った。
IAAでは、基部から頭部に向かって濃度が高くなる傾向が見られた。特に、生育初期段階において頭部でIAA濃度がかなり高かった。ABAでは、生育初期段階において、濃度は頭部で低く、基部へ向かうに従って高くなる傾向が見られた。一方、生育中後期段階においては頭部でABA濃度が高く、基部で低くなる結果が得られた。CK類でiPとZを比較すると、濃度は全体的にiPよりもZの方が高かった。GA類では、頭部と2cm部においてはGA1よりもGA4の濃度が高かったため、アスパラガスにおいてはGA4の方が多く生成されているのではないかと推察される。JA類では、一部を除いて頭部に向かって濃度が高く、基部へ向かうほど低くなる傾向が見られた。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

休眠現象の解明の基礎として、‘ウエルカム’の植物体(繁茂した茎葉、若茎、地下茎、りん芽)の1年間の内生植物ホルモンの濃度変化(季節変動)を網羅的に分析するための材料が採取できた。若茎にかんしては研究実績の概要に記述したように詳細な分析を行った。
アスパラガスの株の萌芽状態を調査した。
伏せ込み促成栽培とは、休眠中の冬に植物体を掘り出して、低温処理(低温の外気中に放置)により休眠打破し、再び温室内に埋めて(伏せ込み)、萌芽させ、促成的に冬に収穫する栽培法である。
休眠打破後の萌芽性(芽から食用部分の若茎が次々に伸長する性質)が異なる3品種が存在している。休眠が浅い(‘ウエルカム’);休眠が中間(‘ゼンユウヨーデル’);休眠が深い(‘ガインリム’)。
伏せ込み促成栽培で、この3品種を用い、1年生の株を、低温(16℃)で休眠打破して、その後の萌芽状態を調査し、3品種の植物体を採取できた。

今後の研究の推進方策

1年間(季節)の植物体の植物ホルモンの濃度変化の解明:休眠現象の解明の基礎として、‘ウエルカム’の植物体(繁茂した茎葉、若茎、地下茎、りん芽)の1年間の内生植物ホルモンの濃度変化(季節変動)を網羅的に分析する。全てのサンプルについて、遠心分離によりアポプラスト液の採取を試みる。
アスパラガスの株の萌芽状態を調査する。さらに、毎月、植物体を採取して植物ホルモンを分析する。試験1の萌芽と休眠期の植物体の全てから網羅的に植物ホルモンを分析した結果より、休眠の制御に関連すると判断される活性型の植物ホルモンを全て分析する。
休眠打破後の萌芽性が異なる品種と内生植物ホルモンの関係の解明:休眠打破後の萌芽性(芽から食用部分の若茎が次々に伸長する性質)が異なる3品種が存在している。休眠が浅い(‘ウエルカム’);休眠が中間(‘ゼンユウヨーデル’);休眠が深い(‘ガインリム’)。
伏せ込み促成栽培で、この3品種を用い、1年生の株を、低温(16℃)で休眠打破して、その後の萌芽状態を調査し、経時的に3品種の植物体を採取し、試験1の結果から活性型の植物ホルモンを全て分析する。以上の解析により、アスパラガスの休眠生理のメカニズムを解明し、効率の良い栽培に向けた科学的基盤を確立する。

次年度使用額が生じた理由

アスパラガスの採取が予定よりも少なくて、分析の総量がやや少なくなった。担当していた学生が進路の関係で少なめの分析しか完了出来なかったために、試薬など消耗品の消費量が少なくなった。

次年度使用額の使用計画

前年度のアスパラガスの少なめの分析しか完了出来なかった分を計画的に取り戻すように進めて、結果として、試薬など消耗品の消費量を前年度分まで多くする。

  • 研究成果

    (5件)

すべて 2017 2016

すべて 学会発表 (5件)

  • [学会発表] LC-MSによる植物ホルモンの網羅的分析法の開発2017

    • 著者名/発表者名
      児島清秀・野村隼大・五十嵐央也
    • 学会等名
      第20回LCテクノプラザ
    • 発表場所
      横浜情報文化センター(神奈川県・横浜市)
    • 年月日
      2017-01-19 – 2017-01-20
  • [学会発表] メロンの植物体と果実の内生植物ホルモンの網羅的定量2016

    • 著者名/発表者名
      野村隼大・児島清秀
    • 学会等名
      園芸学会北陸支部会
    • 発表場所
      朱鷺メッセ(新潟県・新潟市)
    • 年月日
      2016-11-29 – 2016-11-30
  • [学会発表] キクの挿し穂の内生植物ホルモンの分布2016

    • 著者名/発表者名
      五十嵐央也・矢野志野布・児島清秀
    • 学会等名
      園芸学会北陸支部会
    • 発表場所
      朱鷺メッセ(新潟県・新潟市)
    • 年月日
      2016-11-29 – 2016-11-30
  • [学会発表] キュウリ果実のアポプラスト中の主要な内生植物ホルモンの分布2016

    • 著者名/発表者名
      児島清秀・高田真裕香
    • 学会等名
      植物化学調節学会
    • 発表場所
      高知大学(高知県・高知市)
    • 年月日
      2016-10-29 – 2016-10-30
  • [学会発表] アスパラガスの若茎におけるステージごとの部位別の伸長速度2016

    • 著者名/発表者名
      唐天利・児島清秀・久保田奏子・元木悟
    • 学会等名
      園芸学会
    • 発表場所
      名城大学(愛知県・名古屋市)
    • 年月日
      2016-09-10 – 2016-09-11

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公開日: 2018-01-16  

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