トマトの着色不良果の発生には高温の関与が重要であることをフルーツディスク(FD)の評価系で確認した。そこで着色不良の発生をハウスで再現する高温処理を行うため温湯チューブによる果皮表面の高温処理が有効で、通常なら発生率が低くなる秋冬期に着色不良果を生産でき、果実表面の高温とカリウム(K)施肥による効果をハウス内で検証できた。 これまでに着色不良の発生率はKの施用により低下し、FDでもK処理により着色したため、今年度はK30よりもさらに高濃度であるK60区で検討した。その結果、着色不良の発生指数はK30区よりも有意に減少したが、尻腐れ果の発生率が増加した。このことから、着色不良果の発生を抑えるためにKだけを増やすという対策は、他のカチオンの吸収バランスも考慮する必要があることが確認された。 このように、ハウス内で処理した果実やFDを供試し、Kや高温処理により着色程度の異なる条件が明らかになったため、カロテノイド代謝関連遺伝子(6種類)の発現解析をRT-PCRにより行った。その結果、K10とK30で栽培した緑熟果の間、着色不良果と正常果の間ではいずれも有意な違いはなかった。FDでKCl区がDW区よりフィトエン合成酵素(Psy)の発現がわずかに高かったが、カロテノイド代謝に関与する各遺伝子の発現において顕著な影響は確認できなかった。さらに、PDS活性を抑制するフルリドンを緑熟果に処理したところ、果実全体が黄色い着色不良果となった。この症状はK欠乏でみられる果実の肩部のみが着色不良となる生理障害とは異なったが、着色に関与する仕組みの参考として、改めて遺伝子発現等を含めて詳細な検討を行いたいと考えている。 本研究では着色不良の鍵となる酵素を明らかにできなかったが、着色不良を軽減するために果実の発育期間でのK欠乏期間を3週間以内でKを施肥することの重要性が確認された。
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