研究実績の概要 |
香り豊かなイワテヤマナシの在来品種‘ナツナシ’とニホンナシ栽培品種‘幸水’のF1集団を用いて香気成分に対するQTL分析を行い候補遺伝子を特定使用とす る内容である。初年度に‘ナツナシ’X‘幸水’のF1集団を用いて‘ナツナシ’、‘幸水’のSSRマーカーからなる骨格連鎖地図を作成し、その後の2年間で13種類の香気成分のQTLが ‘ナツナシ’の LG2 (Linkage Group 2), LG9に検出された。LOD3以上の香気成分のQTLは‘ナツナ シ’で22種類、幸水で3種類だった。2年間‘ナツナシ’で検出できたQTLの多くはLG2、LG9に座乗するエチル エステル類、アルコールであり年次安定性があった。最も効果が大きい‘ナツナシ’のLG2には9種類のエチルエステルのQTLが2ヶ年共に検出された。近傍マーカーは香りナシ育種における選抜マーカー(MASマーカー)として期待 できる。またリンゴのLG2にはエステル合成の最終段階で働くMdAAT1遺伝子が座乗しているとの報告があり、‘ナツナシ’でも同様の遺伝子がLG2に座乗していると予想された。‘ナツナシ’、‘幸水’でAAT1遺伝子をマッピングするため‘ナツナシ’、‘幸水’由来のAAT遺伝子の単離を試みた。AAT遺伝子はリンゴでは相同性が高い多重遺伝子群を形成している。リンゴのAAT遺伝子配列を参考にプライマーを設計し、‘ナツナシ’、‘幸水’のゲノミックDNAからAAT遺伝子群をTAクローニングし配列決定した結果、AAT遺伝子中の複数のIn/del、T-stretch、SNPsを使って‘ナツナシ’では9種類、‘幸水’では10種類のAAT遺伝子がマッピングできた。LG2のAAT遺伝子が‘ナツナシ’、‘幸水’共にマッピングできたため、エチルエステル合成におけるAAT遺伝子の発現制御メカニズムの解明とMASマーカーの利用が期待できる。
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