本研究の主目的とした施設園芸生産における栽培法の高度化と省力化に資する新たな養液栽培法(システム化)の開発と実用化について,株式会社いけうちとの共同研究開発(~2019)によって新規な超微粒化液肥(平均水滴粒径50~100マイクロメートル:セミドライフォグ1流体噴霧式,1ノズル/m間隔)噴霧水耕栽培システムは,実用普及型として令和元年からの一般販売が開始された.従来型の噴霧水耕栽培法に比べて著しく微粒化したフォグ状液肥の根圏噴霧間隔の迅速な制御栽培法を代表的な施設園芸作目(リーフレタス,中玉トマト,四季成り性イチゴ,切りバラ)の周年栽培試験によって検討し,発根の促進と根毛発達を伴った細根形成が成長量と収穫量の増加に加えて品質の向上(トマトの高糖度化),並びに作期の拡大(夏秋イチゴ)の要因であることを成長生理学的に実証した.さらに栽培装置の軽量化(支持培地無しの中空根圏)と廃液が無い循環型の節水栽培システムの実証栽培試験を通じて実用普及型の開発に寄与した. 本年度は本栽培法に特化した栽培技術である根圏CO2施肥をリーフレタスおよびトマトでの再検証として行い,その成育促進の成長生理学的影響を検討した.光合成速度/蒸散速度と測定葉の相対含水量の測定により,気孔コンダクタンス(開孔度)の日変動における真昼頃の有意な減少と,それに伴う蒸散速度の抑制を明らかにした.気孔を介したガス交換は特に蒸散要求が高い盛夏期の日中では過蒸散による水ストレスを被りやすく一時的な萎凋が生じるが,根圏CO2施肥により根から蒸散流で葉中に運ばれた葉内CO2濃度が上昇することで光合成を維持したまま気孔を閉じて過蒸散を抑制し,葉含水量を維持して強光高温下での一時的な水ストレスを回避して日中を通じた成長の維持に繋がる可能性を示唆した.これにより夏季施設栽培における新養液栽培法の開発に繋がった。
|