常緑性のツツジ亜属種と落葉性で黄色花のPentanthera亜属種との亜属間交配で得られた実生の黄色花色は,ツツジ亜属種より遺伝したCCD4の高発現のため退色化する.すなわち,常緑性黄花ツツジ作出には,交配親としてCCD4遺伝子の発現量が低い常緑性ツツジ種を用いることが有効と考えられる.一昨年度の報告で,開花当日の花弁内におけるCCD4遺伝子の発現量は,常緑性ツツジ種によって大きく異なり,特に,ケラマツツジ亜節に発現量の低い種が存在することを明らかにした.本年度は,常緑性黄色花ツツジ作出のための育種素材として,ケラマツツジ亜節に属するツツジ類の有効性を検討するため,開花当日の花弁内でのCCD4遺伝子の発現量が低かったケラマツツジ亜節のサキシマツツジおよびヤクシマヤマツツジ,サツキ亜節サツキ列のサツキの3種と,逆に,発現量が高かったサツキ亜節サツキ列のセンカクツツジ,サツキ亜節ヤマツツジ列のタイワンヤマツツジおよびオオシマツツジツツジの3種を用いて花弁発育に伴うCCD4遺伝子発現量の変化を調査した.花弁発育に伴うCCD4遺伝子の発現量について,サキシマツツジ,センカクツツジ,タイワンヤマツツジおよびオオシマツツジでは,開花前日から当日にかけて増加し,その後,減少した.残りの3種では,開花前日から2日後にかけて増加し,その後,減少した.キレンゲツツジと比較すると,センカクツツジおよびタイワンヤマツツジの発現量は全発育期間を通して有意に高く,また,オオシマツツジは開花当日以降,サツキは開花2日後以降に有意に高かった.一方,サキシマツツジおよびヤクシマヤマツツジの2種では,全発育期間を通してキレンゲツツジの発現量と有意差はみられなかった.特に,サキシマツツジの発現量は,開花当日以降で調査した常緑性ツツジの中で最も低く,また,開花2日後以降では,キレンゲツツジより発現量が低かった.
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