研究実績の概要 |
令和元年(2019)年度の研究においては、当初の課題として掲げた(1)ピリジンジカルボン酸(PDCA)類とピリジンカルボン酸(PCA)類の開花促進作用の研究に加えて、本課題研究の途上で新たに発見した(2)PCA類の作物幼苗に対する発根促進作用(根系形成促進作用)の研究、さらに(3)カーネーションACC合成酵素の対立遺伝子の実証研究を行った。 (1)の開花促進作用の検討では、カーネーションを材料にして、最近、別の研究グループによって、エチレン生合成阻害剤として報告された2-PCAは, 金属キレート剤として作用し副作用をおよぼすため、切り花処理剤として実用できないことを明らかにした。 (2)の根系形成促進作用の検討では、新規切り花処理剤の探索過程で長鎖不飽和脂肪酸のNa塩が発根促進作用を持つことを見出し、これらと3-PCAを併用すると相乗作用により根系形成が著しく促進されることを明らかにした。本研究の成果は、3-PCAを素材にした切り花処理剤の開発と野菜苗の根系形成促進剤の開発の2つの可能性を示唆するものである。 (3)のACC合成酵素の研究では、DcACS1bのホモ接合体の発見とカーネーションと野生種キバナナデシコ(DkACS1.1 ~DkACS1.3をもつ)の交雑種(ミニティアラカーネーション)のACC合成酵素遺伝子の構成を分析して、カーネーションのDcACS1aとDcACS1bが対立遺伝子であることを実証した。本研究の結果は、主要切り花であるカーネーションにおける新たな鮮度保持技術の開発に寄与することが期待される分子生理学上の重要な成果である。
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