研究実績の概要 |
カシ類うどんこ病菌Erysiphe gracilisを4種に分割することを提案した。さらに、アカガシ、ツクバネガシに出現するE. gracilis var. longissimaは2つの明瞭なgenotypeに分割され、形態的にも違いが認められたので、2種に分割することを提案した。以上により、日本で常緑カシ類に発生するE. gracilis(変種を含む)は6種に分割されることになった。本研究実施中に、アラカシ、シラカシに未記録のうどんこ病菌が発生することを発見し、形態およびDNAシークエンス解析によりこの菌が落葉ナラ類に発生するE. quercicolaであることを明らかにした。三重県津市の住宅街のアラカシ生垣にC. wrightii, E. gracilis種複合体, E. quercicolaが同所的に発生することを見つけたので,この場所を調査定点として刑事的に3種うどんこ病菌の発生状況を調査した。4月中旬にC. wrightiiが初発した。6月中旬にはE. gracilis種複合体が発生したが,コロニーの状況から5月中には感染していたと考えられた。剪定によって生じた夏季の新葉にはE. quercicolaのみが発生し,C. wrightiiとE. gracilis種複合体は発生しなかった。これは,C. wrightiiとE. gracilis種複合体がもともとのカシ類のうどんこ病菌であり,カシ類の生活史に同調するように進化を遂げたため,人間活動によるカシ類の生活史の撹乱に適応することができなかったためと考えられた。これに対して,E. quercicolaはカシ類に新たに宿主を拡大した菌であり,人間活動によって生じた未利用資源をうまく利用して生活場所を確保したと考えられた。
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