研究課題
(1)TALENによるAVR遺伝子の異なるゲノム環境へ導入TALENを用いてAVR-Piaを、イネ菌(Avr-Pia非保有)のrepeat rich領域およびrepeat poor領域それぞれに導入した。repeat poor領域へは、AVR-Piaが導入された形質転換体が100%の高効率で得られた。repeat rich領域への形質転換を行ったが、常染色体非テロメアのrepeat rich領域についてはAVR-Piaがシングルコピーで導入されたことを確認した。しかしながら、過剰染色体テロメアのrepeat rich領域へのターゲッティングは成功しておらず、導入は非常に困難と考えられた。現在、得られた2種類の導入株のAVR-Piaの機能喪失変異体を得るために、愛知旭(Pi-a保有)およびササニシキマルチライン東北78号(Pi-a保有)への接種試験を行っている。(2)メヒシバ菌からイネ菌へのAVR遺伝子の再獲得の再現メヒシバ菌の Inago1-AVR-Pita2-Inago1領域に、選抜マーカーとなるhph遺伝子をTALENにより導入した。また、共存培養の相手となる、AVR-Pitaを持たないイネ菌Ina168に選抜マーカーとなるnptII遺伝子を導入した。(3)AVR-Piztの新たな変異機構タイ、フィリピン、ベトナム産のイネ菌を用い、AVR-Piztの分布を調査したところ、これまでに報告されていなかったAVR-Pizt欠失菌株が多数見出された。欠失菌は3カ国すべてに存在し、計33菌株検出された。欠失領域を解析したところ、27菌株ではほぼ同一の16kbの領域が欠失していた。現在、これらの菌株の詳細な欠失領域の解析を行っている。
3: やや遅れている
本研究の鍵となっているのは、TALENを用いたrepeat rich領域への遺伝子導入である。現在のところ、イネ菌第4染色体のrepeat rich領域への遺伝子導入が成功したところである。当初は、過剰染色体のテロメア近傍にも遺伝子を導入する予定であったが、この領域への導入は未だ成功していない。また、昨年度は、申請者が出産により育児休業を取得したため、研究が予定よりがやや遅れた。
(1)TALENによるAVR遺伝子の異なるゲノム環境へ導入本研究の当初の目的は、複数のrepeat rich領域に非病原力遺伝子を導入し、領域の違いによる変異頻度の差を比較することであったが、TALENを用いても形質転換が困難であるため、今後は現在得られた形質転換体を用い、接種試験による変異病斑から得られた菌の変異機構に焦点を当て、解析を進めていこうと考えている。また、これまでrepeat poor領域としてAVR-Pizt領域へのターゲッティングを行ってきたが、今後はこれに加え、この領域よりさらにrepeat poorなhouse keeping遺伝子領域への遺伝子導入も行う。これらのrepeat poor領域に導入されたAVR遺伝子と、その遺伝子が元あったrepeat rich領域との変異頻度の比較を行う。repeat頻度が低いほど、欠失変異菌は得られにくくなると考えられる。AVR-Pi9とAVR-Pibの分布およびゲノム環境調査は予定通り行う。(2)メヒシバ菌からイネ菌へのAVR遺伝子の再獲得の再現昨年度に得た形質転換体を用い、共存培養によるAVR遺伝子再獲得が再現できるかを試みる。(3)AVR-Piztの新たな変異機構これまで得られていなかったAVR-Piztの欠失変異菌が東南アジアから多く発見された。欠失領域の類似性から、この欠失は異所的に多発しているのではなく、1回(または数回)の欠失が東南アジア地域に定着して拡散したものと考えられる。本遺伝子については、欠失後に遺伝子を再獲得した菌(AVR-Piztの座乗染色体が第7染色体以外に変化している菌)は見つかっていない。AVR-Pizt周辺には少数の転移因子が存在することを確認済みであるが、転移因子の数が欠失菌では保有菌より多くなっているかについても調査し、この領域の変異の起こりやすさを再評価したいと考えている。
2016年7月20日に出産し、その後育児休業を取得していたため、研究期間が短くなり次年度使用額が生じた。
本年度は、昨年度に解析の進まなかった、分子生物学的解析(PCR、サザン解析、次世代シークエンス解析)を行う予定である。ポリメラーゼ、DNA解析キット等を購入予定である。
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