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2016 年度 実施状況報告書

TALENにより異なるゲノム環境に導入されたいもち病菌AVR遺伝子の変異頻度比較

研究課題

研究課題/領域番号 16K07615
研究機関神戸大学

研究代表者

中馬 いづみ  神戸大学, 先端融合研究環, 助教 (90628926)

研究期間 (年度) 2016-04-01 – 2019-03-31
キーワードイネいもち病菌 / 非病原力遺伝子 / Pyricularia oryzae
研究実績の概要

(1)TALENによるAVR遺伝子の異なるゲノム環境へ導入
TALENを用いてAVR-Piaを、イネ菌(Avr-Pia非保有)のrepeat rich領域およびrepeat poor領域それぞれに導入した。repeat poor領域へは、AVR-Piaが導入された形質転換体が100%の高効率で得られた。repeat rich領域への形質転換を行ったが、常染色体非テロメアのrepeat rich領域についてはAVR-Piaがシングルコピーで導入されたことを確認した。しかしながら、過剰染色体テロメアのrepeat rich領域へのターゲッティングは成功しておらず、導入は非常に困難と考えられた。現在、得られた2種類の導入株のAVR-Piaの機能喪失変異体を得るために、愛知旭(Pi-a保有)およびササニシキマルチライン東北78号(Pi-a保有)への接種試験を行っている。
(2)メヒシバ菌からイネ菌へのAVR遺伝子の再獲得の再現
メヒシバ菌の Inago1-AVR-Pita2-Inago1領域に、選抜マーカーとなるhph遺伝子をTALENにより導入した。また、共存培養の相手となる、AVR-Pitaを持たないイネ菌Ina168に選抜マーカーとなるnptII遺伝子を導入した。
(3)AVR-Piztの新たな変異機構
タイ、フィリピン、ベトナム産のイネ菌を用い、AVR-Piztの分布を調査したところ、これまでに報告されていなかったAVR-Pizt欠失菌株が多数見出された。欠失菌は3カ国すべてに存在し、計33菌株検出された。欠失領域を解析したところ、27菌株ではほぼ同一の16kbの領域が欠失していた。現在、これらの菌株の詳細な欠失領域の解析を行っている。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

本研究の鍵となっているのは、TALENを用いたrepeat rich領域への遺伝子導入である。現在のところ、イネ菌第4染色体のrepeat rich領域への遺伝子導入が成功したところである。当初は、過剰染色体のテロメア近傍にも遺伝子を導入する予定であったが、この領域への導入は未だ成功していない。
また、昨年度は、申請者が出産により育児休業を取得したため、研究が予定よりがやや遅れた。

今後の研究の推進方策

(1)TALENによるAVR遺伝子の異なるゲノム環境へ導入
本研究の当初の目的は、複数のrepeat rich領域に非病原力遺伝子を導入し、領域の違いによる変異頻度の差を比較することであったが、TALENを用いても形質転換が困難であるため、今後は現在得られた形質転換体を用い、接種試験による変異病斑から得られた菌の変異機構に焦点を当て、解析を進めていこうと考えている。また、これまでrepeat poor領域としてAVR-Pizt領域へのターゲッティングを行ってきたが、今後はこれに加え、この領域よりさらにrepeat poorなhouse keeping遺伝子領域への遺伝子導入も行う。これらのrepeat poor領域に導入されたAVR遺伝子と、その遺伝子が元あったrepeat rich領域との変異頻度の比較を行う。repeat頻度が低いほど、欠失変異菌は得られにくくなると考えられる。AVR-Pi9とAVR-Pibの分布およびゲノム環境調査は予定通り行う。
(2)メヒシバ菌からイネ菌へのAVR遺伝子の再獲得の再現
昨年度に得た形質転換体を用い、共存培養によるAVR遺伝子再獲得が再現できるかを試みる。
(3)AVR-Piztの新たな変異機構
これまで得られていなかったAVR-Piztの欠失変異菌が東南アジアから多く発見された。欠失領域の類似性から、この欠失は異所的に多発しているのではなく、1回(または数回)の欠失が東南アジア地域に定着して拡散したものと考えられる。本遺伝子については、欠失後に遺伝子を再獲得した菌(AVR-Piztの座乗染色体が第7染色体以外に変化している菌)は見つかっていない。AVR-Pizt周辺には少数の転移因子が存在することを確認済みであるが、転移因子の数が欠失菌では保有菌より多くなっているかについても調査し、この領域の変異の起こりやすさを再評価したいと考えている。

次年度使用額が生じた理由

2016年7月20日に出産し、その後育児休業を取得していたため、研究期間が短くなり次年度使用額が生じた。

次年度使用額の使用計画

本年度は、昨年度に解析の進まなかった、分子生物学的解析(PCR、サザン解析、次世代シークエンス解析)を行う予定である。ポリメラーゼ、DNA解析キット等を購入予定である。

  • 研究成果

    (10件)

すべて 2016 その他

すべて 国際共同研究 (3件) 雑誌論文 (4件) (うち国際共著 2件、 査読あり 4件、 オープンアクセス 2件、 謝辞記載あり 4件) 学会発表 (3件) (うち国際学会 2件)

  • [国際共同研究] University of Philippines Los Bagnios/IRRI(フィリピン)

    • 国名
      フィリピン
    • 外国機関名
      University of Philippines Los Bagnios/IRRI
  • [国際共同研究] Nong Lam University/Agricultural Genetics Institute/Plant Protecthion Research Institute(ベトナム)

    • 国名
      ベトナム
    • 外国機関名
      Nong Lam University/Agricultural Genetics Institute/Plant Protecthion Research Institute
    • 他の機関数
      1
  • [国際共同研究] Kasetsart University(Thailand)

    • 国名
      タイ
    • 外国機関名
      Kasetsart University
  • [雑誌論文] Host specialization of the blast fungus Magnaporthe oryzae is associated with dynamic gain and loss of genes linked to transposable elements.2016

    • 著者名/発表者名
      Yoshida K, Saunders DGO, Mitsuoka C, Natsume S, Kosugi S, Saitoh H, Inoue Y, Chuma I, Tosa Y, Cano LM, Kamoun S, Terauchi, R
    • 雑誌名

      BMC Genomics

      巻: 17 ページ: 370

    • 査読あり / オープンアクセス / 国際共著 / 謝辞記載あり
  • [雑誌論文] Generic names in Magnaporthales.2016

    • 著者名/発表者名
      Zhang, N., J. Luo, A.Y. Rossman, T. Aoki, I. Chuma, P.W. Crous, R. Dean, R.P. de Vries, N. Donofrio, K.D. Hyde, M.-H. Lebrun, N.J. Talbot, D. Tharreau, Y. Tosa, B. Valent, Z. Wang, and J.-R. Xu.
    • 雑誌名

      IMA Fungus

      巻: 7 ページ: 155-159

    • 査読あり / オープンアクセス / 国際共著 / 謝辞記載あり
  • [雑誌論文] Genetic analysis of the resistance of barley to cryptic species of Pyricularia.2016

    • 著者名/発表者名
      Tagle, A.G., I. Chuma, H. Hisano, K. Sato, and Y. Tosa
    • 雑誌名

      Journal of General Plant Pathology

      巻: 82 ページ: 302-306

    • 査読あり / 謝辞記載あり
  • [雑誌論文] Anthracnose of black locust caused by Colletotrichum nymphaeae (Passerini) Aa.2016

    • 著者名/発表者名
      Yamagishi, N., T. Sato, I. Chuma, Y. Ishiyama, and Y. Tosa
    • 雑誌名

      Journal of General Plant Pathology

      巻: 82 ページ: 174-176

    • 査読あり / 謝辞記載あり
  • [学会発表] Cloning of an avirulence gene of an Eleusine isolate of Pyricularia oryzae against common wheat2016

    • 著者名/発表者名
      Asuke, S., N.J. Magculia, I. Chuma, Y. Tosa
    • 学会等名
      The 7th International Rice Blast Conference
    • 発表場所
      Alabang, Philippines
    • 年月日
      2016-10-09 – 2016-10-14
    • 国際学会
  • [学会発表] TALENにより異なるゲノム領域に導入されたイネいもち病菌非病原力(AVR)遺伝子の変異頻度比較解析2016

    • 著者名/発表者名
      平岡大輝・荒添貴之・土佐幸雄・中馬いづみ
    • 学会等名
      平成28年度植物感染生理談話会
    • 発表場所
      シーパル須磨(兵庫県・神戸市)
    • 年月日
      2016-08-11
  • [学会発表] Identification of gene pairs involved in the incompatibility between Eleusine isolates of Pyricularia oryzae and common wheat2016

    • 著者名/発表者名
      Asuke, S., I. Chuma, Y. Tosa
    • 学会等名
      IS-MPMI XVII Congress
    • 発表場所
      Portland, Oregon, U.S.A.
    • 年月日
      2016-07-17 – 2016-07-21
    • 国際学会

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公開日: 2018-01-16   更新日: 2022-02-16  

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