研究課題
平成29年度、非病原力遺伝子AVR-Piaをイネいもち病菌のAVR-Pizt領域(repeat poor領域)に導入した形質転換体zt#1の、Pia保有イネ品種への接種実験により、AVR-Piztと導入されたAVR-Piaを含む92kbの領域を欠失させた変異菌が分離された。この領域には2つの非病原力遺伝子の他に約20個の遺伝子が含まれており、この変異を持つ菌が自然界で生存し続けられるかは疑問である。そこで、このような大規模な欠失が自然界で起こっているかを調べるために、国内外のイネおよびイネ科植物から分離したいもち病菌における当該領域の調査を行った。P. oryzaeの非イネ菌(国内外産のアワ菌、キビ菌、シコクビエ菌、オヒシバ菌、エンバク菌、ペレニアルライグラス菌、コムギ菌、Brachiaria菌)において、当該領域ではAVR-Piztおよびこれを含む周辺100kbの領域を欠失させた菌株は存在しなかった。日本産、中国産、ベトナム産、タイ産、フィリピン産、インドネシア産、イタリア産、ブラジル産のイネ菌野生株を調べたところ、ベトナム産、フィリピン産、タイ産菌株において、AVR-Piztを含む約20kbを欠失させた菌株が存在した。国別に見た欠失保有菌株数は、ベトナム産が20菌株中8菌株、フィリピン産が26菌株中22菌株、タイ産が6菌株中3菌株であった。非イネ菌でこのような欠失が認められなかったことから、欠失保有イネ菌が分離された地域では、抵抗性イネ品種の利用により欠失保有菌が選抜された可能性が示唆された。また、欠失領域の大きさが、野生株の方が小さかったことから、zt#1において欠失した92kbのうち、野生株で欠失しなかった領域に、病原性または生存に関与する遺伝子が含まれている可能性が考えられた。
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すべて 国際共同研究 (3件) 雑誌論文 (3件) (うち国際共著 2件、 査読あり 3件) 学会発表 (2件) 備考 (1件)
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https://www.obihiro.ac.jp/faculty-r/izumi-chuma