研究課題
青枯病菌の病原性や生理活性に影響を与えるRSSタイプのファージについて特にORF13(転写因子のホモログ。内部にattP配列が存在し、溶原化することでORF長が変化する可変長ORF)に注目し研究を行っている(A)。また、このRSSタイプのファージからは極めて安定かつ低コピー数のプラスミドを作出していたが、今回コピー数が増加した変異RSSファージを利用することでコピー数の増加したプラスミドの作製とその原因領域の調査を行った(B)。Aについて:ORF13を発現プラスミドに導入し、青枯病菌に導入したところ、ポイントミューテーションの入った物しか取得出来なかった。このことから、このORFは青枯病菌において有害であり、厳密な発現制御を行う必要性があると予想された。そこで、このORFが影響を及ぼさない大腸菌内でカセットを作製した。まずは溶原化を防ぐため、ORF13内のattP配列のコドンを変更し大腸菌プラスミドにクローニングし、その後ORF上流にコールドショックプロモーターを配置した(研究計画・方法28-1)。また、溶原化後のORF13’についても同様に作製した。さらに、ファージ内のORF13についても同様の変異導入を試みた(同28-2)。Bについて:当初コピー数の増加原因はori領域の変異と予想し、シークエンス解析と比較を行ったが、ori領域の配列は完全に保存されていた。原因領域はrep遺伝子にあり、このファージから作製したプラスミドは野生株由来プラスミドと比べ3倍程度のコピー数を示した。
2: おおむね順調に進展している
28年度に予定していた4項目のうち、3項目までは完了しているため、おおむね順調に進展している。
研究計画通り研究を行っていく。作製した変異株について:宿主への影響と生理活性の変化(病原性、増殖速度、運動性、バイオフィルム形成能、細胞凝集性等)を調べていく。作製したコピー数が増加したプラスミド:通常stringentプラスミドのコピー数は厳密に制御されており改変は難しいがコピー数が増加したプラスミドが取得出来たことから、これをもとに改変、育種を行っていく。また、抗生物質非存在下における安定性について、野生株由来型プラスミドとの比較を行う。また本年度の研究において感染した宿主の運動性を向上させるファージを発見した。今まで、繊維状ファージが感染することで宿主の運動性が低下する例は報告していたが、その逆は初めて観察した。運動性と病原性の関連はしばしば報告されており興味深い。こちらについても今後研究をすすめていく。
適切な執行を行った結果、少額の端数が次年度使用額となった。
この1333円は消耗品代の一部として使用予定。
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すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (3件) (うち国際共著 2件、 査読あり 3件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (1件) 備考 (1件)
Virology Reports
巻: 6 ページ: 61-73
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http://home.hiroshima-u.ac.jp/mbiotech/ichikou/