青枯病菌の病原性や生理活性に影響を与えるRSSタイプについて特にORF13(転写因子のホモログ。内部にattP配列が存在し、溶原化することでORF長が変化する可変長ORF)に注目し研究を行っている(A)。 また、このRSSタイプのファージからは極めて安定なプラスミドを作製、利用できるが、低コピー数であるという問題点がある。今回、感染後の宿主内でコピー数が増加した変異RSSファージを用い、コピー数が増加したプラスミドを取得し、その原因領域を解析した(B)。 Aについて:ORF13を発現プラスミドに導入して青枯病菌に形質転換すると、ポイントミューテーションが入ったクローンしか得ることができない。つまり、この遺伝子の恒常的な発現は青枯病菌にとって有害であると考えられた。そこで、lacリプレッサーの導入やコールドショックプロモーターへの置換等発現をコントロール可能なカセットを大腸菌内で作製し、青枯病菌への導入を行った。しかし、安定性に乏しい結果となった。また、ファージの感染により運動性が減少した青枯病菌は細胞表面から鞭毛、線毛が減少していることは確認していたが、今回、その原因について解析した。鞭毛についてはfliCの発現自体が抑制されていることが判明した。一方、線毛についてはpilAの発現自体は行われており、線毛の形成段階での制限が予想された。繊維状ファージの感染は線毛から行われることとの関連が興味深い。 Bについて:昨年度、選抜を繰り返したところコピー数を10-20倍まで増加させることに成功したプラスミド5株について原因領域を解析し、共通性の高い変異点を選択し、PCRを用い通常のプラスミドでの再現実験を行った。これによりコピー数の制御に関わるのはORF3であることが確定した。
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