ズッキーニ黄斑モザイクウイルス(ZYMV)をはじめとするポティウイルスに対して強度の抵抗性を示すキュウリの自然発生変異体は,Vps4遺伝子の変異によって抵抗性を獲得していることがこれまでの研究期間にて明らかとなった。平成30年度はVps4のウイルス複製および増殖における役割を明らかにするため,当初の計画通りVps4タンパク質と相互作用するウイルスおよび宿主タンパク質を酵母ツーハイブリッド解析により調べた。ポティウイルスは自身のRNAゲノム上に10種ないしは11種類のタンパク質をコードしており,このうち,RNA複製酵素として機能するNIbおよび外被タンパク質CP,ゲノムRNAの5'末端に結合するVPg,アブラムシ伝搬並びにRNAサイレンシングサプレッサーとして機能することが報告されているHC-ProとVps4との相互作用の有無を解析した。その結果,ZYMV由来のHC-ProとVPgのそれぞれがVps4と相互作用する一方で,抵抗性キュウリ由来の変異型Vps4とは相互作用しないことが判明した。加えて,ZYMVタンパク質と罹病性キュウリ由来Vps4の特異的な相互作用は,Vps4の1箇所の変異導入により解除されることが明らかとなった。次に,ウイルス感染した罹病性キュウリ本葉を用いてcDNAライブラリーを作製し,Vps4と相互作用する宿主タンパク質をコードする遺伝子をスクリーニングした。その中でVps4の変異により相互作用が認められなくなったタンパク質として,MYB6転写因子やF-boxタンパク質をコードする遺伝子を単離した。MYB6転写因子およびF-boxタンパク質は,それぞれ病原体に対する防御誘導やストレス耐性に関与することが報告されており,ウイルスはこれらの宿主因子を自身の複製および増殖に利用することで,同時に宿主からの攻撃を効率よく回避していることが示唆された。
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