研究課題/領域番号 |
16K07624
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研究機関 | 宇都宮大学 |
研究代表者 |
園田 昌司 宇都宮大学, 農学部, 准教授 (00325127)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 殺虫剤抵抗性 / ジアミド剤 / コナガ / フルベンジアミド / クロラントラニリプロール / 量的シーケンシング / アミノ酸変異 / リアノジン受容体 |
研究実績の概要 |
1)昨年度はコナガのジアミド剤抵抗性の主要因であるリアノジン受容体のG4946E部位の変異を個体レベルで調べる手法を開発した。本年度は、量的シーケンシングを用いて同変異の個体群内における頻度を推定するための手法を開発した。その手法を用いて、様々な地域で採集されたジアミド剤に対する抵抗性レベルの異なるコナガ個体群におけるG4946E頻度を調べた。その結果、抵抗性レベルとG4946E頻度の間には正の相関があること、G4946E頻度に基づいてジアミド剤のコナガに対する防除効果を予測できることが示唆された。実際のコナガ防除においては、G4946E頻度が40%未満であればジアミド剤の効果が期待できるが、40%以上であればジアミド剤の効果が期待できないので他の系統の薬剤を中心とした防除を行なうことが望ましい。 2)上記手法を用いて、野外におけるコナガ個体群のG4946E頻度の季節的な変化を防除圧の異なるキャベツ圃場(薬剤散布圃場と無散布圃場)に設置されたフェロモントラップに捕獲されたコナガを用いて調べた。その結果、いずれの圃場においてもG4946E頻度は一般に春から夏にかけて上昇し、秋に低下すること、晩秋の頻度と翌春の頻度はほぼ同じであることが明らかとなった。以上の結果は、当該年のジアミド剤の防除効果は、前年のG4946E頻度に基づいて予測できることを示しており、コナガ管理において非常に重要である。G4946E頻度が春から夏にかけて上昇する理由は薬剤散布と考えられるが、秋に低下する理由については現時点では不明である。また、両圃場で採集されたコナガ個体群のG4946E頻度には大きな違いが認められなかったが、これは両圃場が200m程度しか離れておらず、成虫の移動による遺伝子交流があったためと考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
平成29年度の計画は、量的シーケンシングを用いたジアミド剤抵抗性に関わる遺伝子変異(G4946E)の個体群内における頻度推定法を開発することであった。今年度は、G4946E頻度推定法を開発して英語論文として公表した。加えて、フェロモントラップで採集された野外のコナガ個体群におけるG4946E頻度の季節的変化を明らかにし、こちらも英語論文として公表できたため。
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今後の研究の推進方策 |
調査圃場におけるコナガ個体群のG4946E頻度が調査期間の大部分においてジアミド剤の効果が期待できない40%を越えていた。そのため、ジアミド剤の使用を中止して、G4946E頻度がどのように変化するかを調査する。また、新規ジアミド剤(シアントラニリプロール)に対する抵抗性発達の有無をモニタリングする。抵抗性発達が認められる場合は、抵抗性因子について調べる予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初予定していた調査旅行の一部を悪天候等により中止したため、当該助成金が生じた。翌年度は調査回数を増やしてデータの取得にあたる予定である。
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