研究課題/領域番号 |
16K07631
|
研究機関 | 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構 |
研究代表者 |
釘宮 聡一 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 中央農業研究センター, 上級研究員 (10455264)
|
研究分担者 |
下田 武志 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 中央農業研究センター, 上級研究員 (20370512)
|
研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
|
キーワード | 香気成分 / 揮発性物質 / 情報化学物質 / 土着天敵 / 訪花昆虫 / 生態系サービス |
研究実績の概要 |
本研究では、天敵昆虫の働きによる生態系サービスを活用した害虫管理技術を開発するため、農地の周辺に咲く様々な花の揮発性成分をガスクロマトグラフ-質量分析計 (GC-MS) で分析し、天敵や害虫の行動・生理を制御する候補成分の探索を試みてきた。これまで、特に花から顕著に検出される芳香族化合物に注目し、捕食性天敵のモデルとしてヒメカメノコテントウやツヤヒメハナカメムシ等を用いて、これらが化合物に対して示す反応を室内の行動試験で調べ、その誘引や定着に効果がある成分を見出した。一方で、害虫に対するリスク対策として、同成分に例えばコナガの産卵数増加を促す性質などがないことを確認している。 今年度は、昨年度から引き続き、野外でこれらの天敵誘引剤の候補成分の効果を検証するため、圃場に設置した粘着トラップに候補成分を添えて天敵昆虫の捕獲数を調査した。とりわけ冬から春先の低温時には、少数の寄生蜂やハナカメムシ類とともに,多数のハエ・アブ類が捕獲され,その中には天敵として働くと考えられるヒラタアブ類が僅かながら含まれていた。また、その後にはテントウ類も捕獲される傾向があった。圃場周辺環境や諸条件に大きく左右されるものの、花香由来成分には一定の天敵誘引効果があると考えらえる。尚、ヒラタアブ類については、さらに室内試験で花香成分による誘引・定着・産卵促進等の効果を詳細に調べる必要がある。また今回、野外では様々な昆虫が捕獲され、粘着板上では形態の判別が困難な場合が多かったため、DNAバーコーディングによる種同定を試みた。粘着板から剥離したサンプルを用いたシーケンスの成否は昆虫種によって大きく異なり、全体的に成功率も低かった。今後、サンプルの回収・保存・抽出法等を改良することで、花香成分を添えた粘着板による効率的な天敵種のモニタリング手法を開発できると期待される。
|