研究課題/領域番号 |
16K07636
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研究機関 | 秋田県立大学 |
研究代表者 |
高橋 正 秋田県立大学, 生物資源科学部, 教授 (80132009)
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研究分担者 |
菅野 均志 東北大学, 農学研究科, 助教 (30250731)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 褐色森林土 / 黒ボク土 / 非アロフェン質黒ボク土 / アンディック特徴 / 一次鉱物組成 / 火山ガラス / 元素組成 |
研究実績の概要 |
東北地方のうち,特に秋田県と宮城県における黒ボク土近隣の褐色森林土地帯を対象として,土壌調査および土壌試料の採取を行った。秋田県(および青森県)においては,白神山地周辺4地点(藤里町,青森県西目屋村),能代市2地点,男鹿市2地点,秋田市1地点,大仙市1地点,横手市1地点において予備的な土壌調査を行い,表層から約50cmまでの試料を集めた。これらの土壌のアンディック特徴(酸性シュウ酸塩溶液可溶アルミニウムおよび鉄,リン酸保持量,など)の分析はほぼ完了し,何れの地点においてもアンディック特徴を満たす,またはそれに近い性質をもつことがわかった。これらのことから,秋田県における褐色森林土地帯の土壌は何れかの火山の火山砕屑物の影響を受けており,その地域は限定的ではないことが示唆された。 宮城県では,仙台市太白区茂庭の太白山東麓の丘陵地(仙台市太白山自然観察の森内)を対象に,地形等を考慮した計47地点から表層から約50cmまでの試料を採取し,アンディック特徴の強弱を分析した。この結果をもとに調査地を代表する6箇所を選定し,土壌断面調査を行なった。その結果,一連の地形面においても,比較的地形の安定した小段丘面のみが淡色普通非アロフェン質黒ボク土に分類され,土層が浅い頂稜は岩盤質普通褐色森林土に,残りはアンディック特徴を弱く持つばん土質褐色森林土となり,褐色森林土地帯のアンディック特徴の強弱と地形との密接な関係が再確認された。 土壌試料および指標テフラ試料の粒径分析,中砂(0.2-0.05mm)部分についての一次鉱物の同定,火山ガラス含量の測定,ガラスの性質については,現在分析等を進めているところである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究代表者が東北大学から秋田県立大学へ異動し,異動先の教育および管理業務のために時間を割く必要があり,その主な担当である秋田県地域の土壌調査(予備調査)は当初予定の3割程度しか実施できなかった。 しかしながら,宮城県ではアンディック特徴の強弱が地形に応じて変化する仙台市近郊の褐色森林土地帯を事例調査地とすることができた。すでに土壌断面調査と試料採取を終えているので,以前に事例調査地とした宮城県大衡村および秋田県秋田市河辺の試料との対比を含めて火山ガラスの断面内分布の特徴や一粒毎の元素分析による起源推定を進めれば,当初の目的を達成することは可能であると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
平成28年度に引き続き,秋田県を中心とした予備的な土壌調査と土壌分析を行う。それらの結果に基づき代表断面を選定し,1m深までの土壌調査を行い,土壌生成層位毎に土壌試料を得る。宮城県では新たな事例調査地についても探索を進め,可能ならば同様の野外調査を実施して土壌試料群を充実させ,バリエーションを増やしたいと考えている。 これらの土壌試料について,アンディック性質に関する土壌分析に加えて,土壌の一般的な化学性の分析を行う。分析項目は次の通りである。全炭素・全窒素(乾式燃焼法,NCアナラーザーによる),pH(H2O)およびpH(KCl)(ガラス電極法),交換性塩基(Ca, Mg, K, Na)および陽イオン交換容量(CEC)(ショーレンベルガー法に基づく自動抽出装置を使用),交換性アルミニウム(Blakemore法)。また,土壌の粒径分析および各画分の前処理を行い火山ガラス分析の試料を得る。 得られた中砂(0.2-0.05mm)部分について,偏光顕微鏡および実体顕微鏡を用いて一次鉱物の同定を行い,火山ガラス含量を求める。試料をポリエステル系樹脂包埋法で固定し,硬化後に表面を研磨して,電顕用試料台にマウントする。これを走査型電子顕微鏡(SEM)-エネルギー分散型X線分光法(EDX)で多量元素(SiO2, TiO2,Al2O3,FeO,MnO,MgO, CaO, Na2O,K2O)の元素分析を行う。 既知の代表的な広域テフラである,鬼界-アカホヤ(K-Ah),姶良-丹沢(AT),および東北地方の主なテフラについても,同様に火山ガラスを分析する。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成28年4月に研究代表者が異動したため,調査,試料採取,分析を計画通りに実行できなかったため。
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次年度使用額の使用計画 |
平成28年度に行う予定であった調査のための旅費,および,土壌とその構成成分の化学分析,機器分析に用いる試薬等の購入に用いる予定である。
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