研究実績の概要 |
東北地方のうち,秋田県,宮城県,岩手県における黒ボク土およびその近隣の褐色森林土地帯を対象として,土壌調査および土壌試料の採取と各種理化学性の分析と火山ガラスの識別を行った。 秋田県北部においては昨年に引き続き,男鹿半島と八郎湖の東部地域など8カ所において簡易土壌調査(0~30cm深)および土壌断面調査(0~100cm)を行い,土壌試料を採取した。これらの試料の物理化学性,特にアンディック特徴である,酸性シュウ酸塩可溶アルミニウムおよび鉄,リン酸保持量などを調べた。その結果,これらの地帯にも黒ボク土および類縁土壌(ばん土質褐色森林土)が分布することが確かめられた。10~20cmの深さの土壌試料の中砂画分(0.05~0.2 mm)に含まれる火山ガラスを1粒ずつ元素分析してその起源を推定したところ,全ての地域で十和田a火山灰(To-a, AD 915年)が含まれ,白頭山-苫小牧火山灰(B-Tm,AD 946-947)の影響もみられた。さらに,男鹿半島の土壌には戸賀カルデラ由来の軽石層(約42万年前)の火山ガラスが含まれていることがほぼ確実となり,噴出源に近い土壌ほどその影響が大きいことがわかった。 昨年までに採取した宮城県北部および岩手県中央部の非黒ボク土地帯丘陵地の土壌16断面に,黒ボク土地帯の土壌3断面(宮城県大崎市鳴子温泉沼井,岩手県盛岡市厨川,岩手県胆沢郡金ケ崎町六原)を新たに加え,土壌層位毎に中砂画分に含まれる火山ガラスの識別を行った。宮城県北部および岩手県中央部では,秋田県北部と同様に全ての調査地でTo-a火山灰が認められた(B-Tm火山灰は確認できず)。非黒ボク土地帯の土壌には,火山ガラス(特にTo-a火山灰)割合と黒ボク特徴の間に正の相関が認められたが,黒ボク土地帯では火山ガラス割合と黒ボク特徴の強弱に一定の傾向を認めることができないことがわかった。
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