研究課題/領域番号 |
16K07638
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
青野 俊裕 東京大学, 生物生産工学研究センター, 助教 (10372418)
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研究分担者 |
齋藤 勝晴 信州大学, 学術研究院農学系, 准教授 (40444244)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 根粒菌 / 共生 / R-body / reb遺伝子 / ampC / ベータラクタマーゼ / 温度 |
研究実績の概要 |
マメ科植物セスバニアの根粒菌は巨大構造体R-bodyの生産に関与するrebオペロンを持つ。rebオペロンが恒常的に高発現する変異株が宿主細胞に感染すると、R-bodyにより宿主細胞は殺傷される。rebオペロン発現の直接的抑制因子として転写因子PraRを、間接的抑制因子として転写因子AZC_3265とLonプロテアーゼが判明している。rebオペロンの発現は、低温かつ2-オキソグルタル酸(2OG)濃度が高い条件下で誘導される。2OGの作用機序は判明しているが、温度の作用機序は不明である。また、R-body生産が宿主の細胞死を引き起こす直接的原因も不明である。本研究では、[課題1]rebオペロンの発現制御機構の全容解明、[課題2]R-bodyによる宿主殺傷機構の全容解明を目的とし、以下のような成果を得た。 [課題1]高温・低温におけるrebオペロンの発現パターンと類似もしくは相反した発現パターンを示す遺伝子の同定を試みた結果、アンピシリン耐性遺伝子ampCがrebオペロンと相反して発現することが判明した。ampCの発現は転写因子AmpRによって制御されており、praR ampR二重破壊株を作製し、温度別にrebオペロンの発現量をpraR破壊株と比較したところ、praR破壊株では37°Cから38°Cに上がると急激に発現量が低下するが、praR ampR二重破壊株ではpraR破壊株よりも高い発現量を示すことが判明した。このことから,AmpRは高温時にrebオペロンの発現を抑制に関わる転写因子であることが示唆された。また、結果からAmpRが温度依存的にampCの発現、及びアンピシリン耐性を制御していることも明らかになった [課題2]rebオペロン高発現株を基にした変異株群からの正常共生株のスクリーニングは進行中である。しかし、依然として、重要と判断される遺伝子の同定には至っていない。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
[課題1]に関して、本年度は「温度によるrebオペロンの発現を制御する新規因子の探索およびその機能解析」を重要課題として展開した。本年度の研究により、rebオペロンの発現とアンピシリン耐性遺伝子の発現が転写因子AmpRを介して温度依存的に制御されていることが明らかになった。[課題2]に関しては、重要な手がかりとなる遺伝子の同定には至っていない。課題間の進捗に差が生じてはいるが、[課題1]で新たな発見があったことから、おおむね順調であると自己判断している。
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今後の研究の推進方策 |
[課題1]では、Lonプロテアーゼがどのようにrebオペロンの発現に関与するのかという点において未解決な部分が多く残されている。次年度は、変異株群の探索および分子生物学的アプローチを駆使し、Lonプロテアーゼいのる制御系の解明を急ぐ。[課題2]では、変異株群の探索を宿主植物への接種により行うのだが、宿主であるセスバニアが比較的大きな植物体であるために、限られたスペースでのスクリーニングが思うように進行しない。次年度は、小さなプラントボックスを用いた無菌栽培下における菌体接種により茎粒が形成されるのかを検討し、接種スクリーニングの効率化を工夫する。
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次年度使用額が生じた理由 |
(理由)二課題のうち、大きな発見と進展のあった一課題に集中したため。もう一課題は費用のあまりかからないスクリーニングを行っていた。
(使用計画)今年度に行う予定であった二課題目の電子顕微鏡による免疫染色観察に主に使用する。また、一課題目でも申請当初は見いだせなかった新たな展開が期待されるため、そこにも使用する。
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