マメ科植物セスバニアの根粒菌は巨大構造体R-bodyの生産に関与するrebオペロンを持つ。rebオペロンが恒常的に高発現する変異株が宿主細胞に感染すると、R-bodyにより宿主細胞は殺傷される。rebオペロンの発現は、rebオペロンにコードされる転写因子RebRにより促進されるが、通常は転写因子PraRにより優勢的に抑制されている。また、転写因子AZC_3265およびLonプロテアーゼによってもrebオペロンの発現は間接的に抑制されている。rebオペロンの発現は環境応答性であり、2-オキソグルタル酸が存在し、かつ、至適生育温度よりも低い温度において、高発現が誘導される。2-オキソグルタル酸はPraRがrebオペロンのプロモーター領域に結合するのを阻害することが判明しているが、温度がどのようにrebオペロンの発現に影響を及ぼすのかは、不明な部分が多い。しかし、ベータラクタマーゼ遺伝子の発現を制御する転写因子PenR(昨年まではAmpRと呼んでいた)が温度依存的にrebオペロンの発現を抑制している可能性がこれまでに判明した。PenRによるrebオペロンの発現制御が直接的であるのかを検証するために、タグ付きPenRの精製を試みてきたが、その可溶化が極めて困難であった。 本年度は昨年度に続き、タグ付きPenRの精製を試みた。様々な方法を試みたが、最終的には、本タンパク質を大腸菌で発現させる際にシャペロンを同時に発現させることで、可溶性のタグ付きPenRを得て、Mg-ATP溶液を用いてタグ付きPenRを繰り返し洗浄することにより、シャペロンを除去することに成功した。この精製PenRを用いて解析したところ、PenRはrebオペロンのプロモーター領域には直接作用せず、間接的にrebオペロンの発現を制御することが判明した。
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