研究実績の概要 |
本研究では,可給性セシウムの化学状態がどのようなものであるかという知見を得ることを目的として研究を行った。平成28年度の当初予定では,強磁場NMRを用いたセシウム解析に検討を行うことになっていた。セシウムを含むケイ酸塩結晶に関する構造解析を行って,以下のような成果を得た。 ホウ酸塩中でのNa+とCs+の配位数と化学シフトの関係を調べるため,Na2B6O10結晶,Cs2B6O10結晶,Cs2B18O28結晶を作製した。作製したxNa2O-yCs2O-3B2O3結晶に関して MAS NMR測定により解析した。 ナトリウムホウ酸塩系およびセシウムホウ酸塩系結晶のXRD測定の結果と報告されている結晶構造のXRDパターンが良い一致を示したことから,Na2B6O10結晶,Cs2B6O10結晶,Cs2B18O28結晶が得られたことが分かった。 Na2B6O10結晶の23Na MAS NMRスペクトルより結晶中のNa+の配位数は,6, 7, 8の3 つであることが報告されている。ピークは四極子相互作用により分裂していたため,ピークの平均値をとって化学シフトとし,6, 7, 8 配位のピークの化学シフトは,それぞれ-16.1, -28.8, -41.5 ppmとした。これより,Na+に関する配位数と化学シフトの関係式を求めると,σ_Na= -12.7N_Na+60.1となった。ただし,σNaを化学シフト,NNaを配位数とする。 Cs2B6O10結晶,Cs2B18O28結晶の133Cs MAS NMRスペクトルよりCs2B6O10結晶,Cs2B18O28結晶中のCs+の配位数は,それぞれ7,10であることが報告されており,化学シフトは,それぞれ53.4, -90.0 ppmであった。Cs+に関する配位数NCsと化学シフトσCsの関係式は,σ_Cs= -47.8N_Cs+388となった。
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