研究課題/領域番号 |
16K07640
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研究機関 | 滋賀大学 |
研究代表者 |
徳田 陽明 滋賀大学, 教育学部, 教授 (30372551)
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研究分担者 |
上田 義勝 京都大学, 生存圏研究所, 助教 (90362417)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 強磁場NMR / セシウム以降 / XRD / 粘土鉱物 / 土壌 |
研究実績の概要 |
29年度は,セシウムの構造解析の基礎となる配位状態とNMR化学シフトの関連性の評価,種々の粘土鉱物における吸着サイトについて強磁場NMR及びXRDにより検討を行った。具体的には,ホウ酸塩ガラスにおけるセシウム配位状態とNMR化学シフトの関係について明らかにした(論文公表済み)カオリナイト,イライト,モンモリロナイトにおいて,それぞれ吸着サイトが異なることを明らかにした(国際学会発表予定)。また,腐食についても同様に検討を行って,明瞭な吸着サイトが無いことが明らかになった。 ナトリウムホウ酸塩結晶およびセシウムホウ酸塩結晶を作製し,NMR測定することで,配位数と化学シフトの関係式を求めた。その上で,xNa2O-yCs2O-zB2O3 (x+y = 1, z = 2,3)ガラスにおいて,23Na,133Cs MAS NMRを測定し,先に求めた化学シフトと配位数の関係式を用いて,ガラス組成とアルカリイオンの配位数の関係を求めた。このような手法でセシウム配位数と化学シフトの関係についての基礎データを得た。 モンモリロナイトへのセシウム吸着を明らかにするため次の実験を行なった。1 mol/Lの塩化セシウム水溶液を調整しイオン交換溶液とした。粘土,有機物,土壌試料それぞれ10 gに対して1 mol/Lの塩化セシウム水溶液を最大用水量の60 %加え,1週間風乾した。その後,減少分の超純水を加えて風乾するという操作を4回繰り返してイオン交換を行った。イオン交換を行った後,超純水100 mL加えて24時間撹拌し,遠心分離を行って上澄みを除去した後風乾してイオン交換試料を作製した。これらの試料を塩化カリウム,リン酸アンモニウム,硝酸で洗浄することにより,セシウムを除去した。これらの各段階の資料についてXRD,高磁場NMRを行なった。その結果,吸着サイトには3種類あることがわかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
H28年度に勤務先が異動になり,実験環境の整備に時間がかかっていたが,H28年度の終了時には,物品の移動を完了させ,立ち上げをH29年度初頭に行うことができた。その後はリソースを本研究に注力することにより,概ね順調に進展している状況となっている。
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今後の研究の推進方策 |
昨年に引き続き,粘土鉱物の解析を進めるとともに,当初計画になっていた次の検討を進める。 1栽培前後の土壌の調査:セシウムを吸着させた土壌を用いて作物(ダイズ)を栽培し,その前後(+途中)の根圏土壌のセシウムの化学状態を調べることによって,作物に移行しやすいセシウムの特定を行う。これにより土壌の観点からのセシウム移行メカニズムについての検討を行う。2作物種への依存性評価:また,種々の作物についての検討も進め,単に放出されやすいセシウムが吸収されるのか,作物ごとに依存性が異なるのかについて明らかにしていく。3:適切な移行低減方法の検討:得られた知見を統合し,どのような土壌にはカリウム増施が必須であり,どのような土壌には少量でよい,ということを判定するパラメータを提案する。この項の目的は,現在の福島での対策法を得ることだけではなく,将来にわたって利用できる知見を得るということでもある。よって,種々の土壌についての検討も行う。 また,新しい解析手法としてベイズ最適化(統計学的にどのような試料の解析を行うべきかを知ることのできる手法)にも注目しており,高磁場NMRや放射光での解析サンプルの限定に用いる予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
消耗品を予定より安価に購入できたため
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