研究課題/領域番号 |
16K07646
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研究機関 | 大阪市立大学 |
研究代表者 |
井上 淳 大阪市立大学, 大学院理学研究科, 准教授 (90514456)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 炭化物 / 土壌 / 変質 / 消失 / ラマン分光法 |
研究実績の概要 |
森林火災等の植物の燃焼で生成された炭化物は,一般に化学的に安定で土壌や堆積物中に長期にわたって保存されると考えられている.一方,近年の研究によりこれらの炭化物が土壌中や堆積物中で化学的に変質し,消失している可能性も指摘されている.本研究では,古生態学的手法(花粉分析,植物珪酸体分析,微粒炭分析)および放射性元素年代測定により,過去の植生などの環境と燃焼物の成因が明らかとなっている累積性土壌中の微細な炭化物の光物理化学特性に着目して,百年から千年オーダーでの炭化物の変質・消失過程を明らかにすることを目的とする.本年度は,奈良県曽爾高原の累積性土壌の表層部(近年堆積した物)および深部(約1000年前)から炭化物を抽出し,ラマン分光法によりそのラマンスペクトルを解析し,現在の同高原の山焼きで生成された炭のラマンスペクトルと比較した.結果,ラマンスペクトルの特徴の大きな傾向は,土壌表層部・深部の炭化物,現在の山焼きによる炭化物で大きな相違は認められなかったが,いくつかの違いが認められた.炭化が進んだ(高炭化:高い被熱温度や長い被熱時間下で生成された)炭化物は現在の山焼き後に認められるものの,土壌中の炭化物には表層及び深部共に認められなかった.このことは,高炭化の炭化物は粒子状としては土壌に残りにくいことを意味する.こうした原因の1つとして,高単価の炭が物理的にも脆いこと,比重の違いなどにより水に流されやすいことなどが想定される.また,低炭化の炭化物は,山焼き後,土壌表層・深部中の炭化物の大部分を占めていたが,一部のスペクトルパラメーターに違いが認められた.これは,時間と共に炭化物のグラフェン構造中の欠損タイプや欠損領域の変化によるものと考えられる.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究内容は順調に進んでおり,研究結果を基にInoue et al. (2017)を公表した.
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今後の研究の推進方策 |
今後,赤外分光法でも分析を行い,土壌中での光物理化学特性変化を明らかにする.また,試料数を増加させる予定である.
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度用いた薬品などが前年度購入分を用いたため,その分が次年度繰越金となった.
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次年度使用額の使用計画 |
薬品等に関して今年度購入の費用として用いる予定である.
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