本研究テーマの目的は,植物の被熱により生成される炭化物が生成した後,土壌や堆積物にどのようにして埋没し,また長期間土壌中に置かれる中で,どのような化学的変質が起こるかを明らかにすることである。特にこうした過程について約1000年というという長期間に追跡しようとする試みが新しいと考えられる。昨年度はそれまでの土壌中の炭化物のラマンスペクトル分析結果についての成果ををとりまとめた。それに引き続いて,今年度は,赤外吸光スペクトル分析結果を整理するとともに,これらの定量的解析方法について検討するとともに,堆積物中の微少な炭化物の抽出方法について検討した。赤外線吸光スペクトルの定量的解析については,既存のこれらに関する先行研究を通読し,どのような解析方法が最も適当であるか検討中である。解析方法決定後,分析結果に基づいた論文作成を行いたいと考えている。堆積物の抽出方法については,土壌中の物と比較するため,土壌と類似した抽出方法を現在想定しているが,他の手法を合わせて現在まで検討,試験中である。研究課題テーマは,今年度で終了であるが,これらの研究については引き続いて行い,赤外吸光スペクトル分析結果に基づく成果と堆積物中の炭化物を扱ったラマンスペクトル・赤外吸光スペクトルについては,その成果を論文や学会発表として今後も公表していく予定である。なお,こうした炭化物の変質や消失過程を考える上で基礎的なデータとなる,炭化物の土壌中での含有量と炭化物が生成された時代,炭化物の母材植物などの研究についてまとめて論文公表した。
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