研究課題/領域番号 |
16K07647
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研究機関 | 明治大学 |
研究代表者 |
加藤 雅彦 明治大学, 農学部, 専任講師 (00578312)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 家畜ふん堆肥 / 溶解性有機物 / 不溶性有機物 / 不飽和土壌元素移動性 / 植物生育・養分吸収 |
研究実績の概要 |
無機肥料と堆肥の併用条件下では,堆肥施用や堆肥抽出物によってリンなど養分の植物吸収量等が高まることが知られているが,その機構は十分に明らかにされていない.無機肥料と堆肥の併用下における養分の土壌中での移動機構と植物への供給機構を同時に解明することを試みる.平成29年度は,不飽和土壌における堆肥中の溶解性有機物による肥料塩類元素の移動量と植物生育や養分吸収量の定量化を試みた.底部に穴を有するアクリルポットを用い,ポットを2層に分けて不飽和土壌の移動試験と栽培試験を組み合わせた試験を行った.黒ぼく土100 gに各元素200 mg/kgとなるようにK,P,Ca,Mgを添加し,ポット下層に充填,上層でコマツナを35日間栽培した.透析膜を用い牛糞堆肥,豚糞堆肥,鶏糞堆肥から溶解性有機物を特異的に回収し(以下,ウシ,ブタ,トリ),ポット底部より潅水した.対照は純水である.栽培試験後,植物の生育調査,土壌の水溶性塩類量を評価した.トリ区の地上部生重は,対照区よりも高かった.下層土壌中の水溶性K量は,トリWSOMの灌水により,添加量の8.3%の水溶性Kが対照よりも減少した.同様に,下層土壌中の水溶性Ca,Mg量は,トリWSOMの灌水によりCa, Mg添加量のそれぞれ17.1%,5.3%が対照よりも減少した.したがって,下層土壌中の水溶性陽イオンはトリWSOMとの共存によって移動性が高まり,水溶性元素が低下したと考えられた.またトリ区における上層土壌中の水溶性成分は,純水よりKでは6.2 mg/kgが減少し,Caでは94.5 mg/kg,Mgでは20.5 mg/kg増加した.すなわち,堆肥WSOMの併用によってKの移動促進よりも植物吸収が高まったため上層の水溶性K量が低下した一方で, Ca,Mgでは植物吸収よりも移動促進が高まったため水溶性Ca, Mg量が高まった可能性が示唆された.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成29年度では,溶解性有機物による不飽和土壌中における元素移動量と植物への吸収量を定量化するができた.また堆肥種による元素移動性と植物への供給性を評価できたため,おおむね順調に進展していると考えた.
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今後の研究の推進方策 |
平成29年度までの結果から,堆肥溶解性有機物と堆肥不溶性有機物による土壌中での元素移動量と植物吸収量に明確な違いを見出すことができた.平成30年度では,これら個別に得られた成果が,両有機物存在下においても同様に得られるか研究を進めていく予定である.
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次年度使用額が生じた理由 |
平成29年度は計画よりも消耗品費が約3万円程度下回ったが,およそ計画通り執行できたと考えている.平成30年度では平成29年度に実施できていない分析を進めるため,その分を消耗品費として使用する予定である.
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