研究実績の概要 |
無機肥料と堆肥の併用条件下では,堆肥施用や堆肥抽出物によってリンなど養分の植物吸収量等が高まることが知られているが,その機構は十分に明らかにされていない.無機肥料と堆肥の併用下における養分の土壌中での移動機構と植物への供給機構を同時に解明することを試みる.平成30年度は,堆肥の酸不溶解性有機物を添加した不飽和土壌と植物根域土壌を区分したポットでの植物栽培試験を行い,根域外に施用した酸不溶性有機物によって植物栽培環境下における土壌中の塩類元素の移動量や植物供給量の定量化を試みた.底部に穴を有するアクリルポットを用い,ポットを2層に分けて不飽和土壌の移動試験と栽培試験を組み合わせた試験を行った.黒ぼく土100 gに堆肥酸不溶性有機物を60 g/kgとなるように添加し,ポット下層に充填,上層でコマツナを35日間栽培した.肥料は,上層黒ボク土50 gのみに計80 mg-N/kgとなるように施肥した.栽培試験後,植物の生育調査,土壌の水溶性塩類量などを評価した.コマツナの乾燥重量は,根域外への酸不溶性有機物の添加により有意に増加した.また,コマツナのCa, Mg吸収量は酸不溶性有機物の有無による有意差はなかった一方で,N・P・K吸収量は堆肥酸不溶性有機物の添加で有意に高くなった.酸不溶性有機物により,土壌中のPが可給化したことでコマツナへのP吸収量が大きくなり,またPとの相助作用によりコマツナへのN吸収が促進されたことで,コマツナの乾物生育が促進されたと考えられた.
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