研究課題/領域番号 |
16K07648
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研究機関 | 静岡理工科大学 |
研究代表者 |
齋藤 明広 静岡理工科大学, 理工学部, 准教授 (50375614)
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研究分担者 |
鮫島 玲子 静岡大学, 農学部, 准教授 (00377722)
小谷 真也 静岡大学, 農学部, 准教授 (20510621)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | キチン / 細菌間相互作用 / 細菌群集構造解析 / 土壌 |
研究実績の概要 |
畑土壌にキチンを添加すると糸状菌を病原とする植物病害が低減することが知られている。キチン添加によって増加するキチン分解微生物が生産する抗菌物質(キチン分解酵素や抗生物質など)が作用するためと考えられている。本研究では、キチン添加土壌に存在するキチン非分解微生物の生態学的意義を、キチン分解活性と抗菌活性に着目して解明するため、本年度は、以下の(1)~(3)を行った。 (1)キチンを添加して培養した畑土壌(褐色森林土)から、コロニーの色や形状が異なる細菌株を分離し、キチン,N-アセチルグルコサミン(以下、キチン単糖),およびN,N'-ジアセチルキトビオース(以下、キチン2糖)に対する資化性とキチン分解能を調べた。その結果、キチン添加後の培養時間に伴って、キチン分解細菌数が変化することが分かった。また、キチン分解細菌株と非分解細菌株の一部をリボソームRNA遺伝子の塩基配列情報に基づき簡易同定した結果、キチン添加後の培養時間の長短によって、それぞれの細菌属の構成が異なることが分かった。 (2)キチン、キチン単糖、あるいはキチン2糖を添加して培養した土壌からDNAを抽出し、リボソームRNA遺伝子アンプリコン塩基配列解析によって細菌群集構造を比較した。 (3)「(1)」で分離・同定したキチン分解および非分解細菌のうち,「(2)」で代表的な属と判断された属の細菌株を対象として、キチン含有寒天培地上で交差培養を行った。その結果、交差部分でキチン溶解斑が増大する組み合わせや、キチン非分解細菌の増殖が促進される組み合わせ、また、互いの増殖を阻害する組み合わせが観察された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
申請に書記した計画のうち、「(1)キチン分解微生物とキチン分解中間産物資化微生物の分離と同定」、「(2)リボソームRNA遺伝子アンプリコン塩基配列解析による細菌群集構造の解析」が計画通り実施できた。一方、学内共通機器である質量分析計付ガスクロマトグラフィーの更新時期と重なったため、計画のうちの「(3)キチン添加土壌中の揮発性化合物の同定」をすることができなかった。代わって平成30年度に実施予定であった「キチン分解微生物と非分解微生物の共存下でのキチン分解特性の評価」を行った。これらの状況から、上記のように判断した。
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今後の研究の推進方策 |
学内共通機器である質量分析計付ガスクロマトグラフィーが今年2月に無事に更新されたため、平成29年度に実施予定であった「(3)キチン添加土壌中の揮発性化合物の同定」を本年度に速やかに実施する。機器の更新に際して、揮発性化合物の分析に適したオプションが付加されたため、迅速に作業が進むことを期待している。一方、分離した細菌株の抗菌活性の有無を調べ、抗菌物質の同定作業も進めていく。さらに、リボソームRNA遺伝子アンプリコン塩基配列解析による真核生物群集構造の解析も行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究は概ね順調に遂行できているが,一部,委託分析(次世代シーケンシング解析)用の試料調製に若干の遅れが生じているため,1年目の金額のうち,当該委託分析費用分の約17万円を2年目に繰り越して使用する。
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次年度使用額の使用計画 |
委託分析(次世代シーケンシング解析)用の試料調製作業はその後順調に完了し,平成29年度4月に委託分析を依頼した。
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