研究課題
平成29年度までの実施状況を受け、平成30年度は、細菌株のキチン分解能の有無と細菌属および抗菌活性の有無の関係性を知ることを目的として、キチン添加培養畑土壌から分離した細菌株について、細菌属、キチン分解能、および抗菌活性を調べた。その結果は以下のとおりである。(1)キチンを添加して45日間培養した土壌から分離した細菌株78株とキチンを添加せずに同一の土壌を同一期間培養した土壌から分離した細菌株81株について、キチン分解能と抗菌活性の有無を調べたところ、キチン分解活性をもつ細菌株の割合が、キチンを添加した方が添加しなかった場合に比べて10%程度多かったのに対し、抗菌活性陽性の細菌株の割合は両者の間でほとんど変わらなかった。(2)キチンを添加して5日間培養した土壌から分離して簡易同定した78株のうち、半分以上はStreptomyces属であった。その他、5~10%程度はAgromyces属、Paenibacillus属、Microbacterium属であった。一方、45日間培養した土壌から分離した細菌株のうち簡易同定した72株については、Streptomyces属は5%程度であり、Microbacterium属が約3分の一を占めた。その他、Agromyces属、Lysobacter属、およびBacillus属が5~10%を占めた。これらの細菌属の割合のうち、Streptomyces属とLysobacter属の占める割合は、土壌抽出DNAのアンプリコン塩基配列の解析結果と同様の傾向を示したが、その他は、大きく異なっていた。(3)キチン添加培養土壌から分離された主要な細菌属のうち、Streptomyces属、Agromyces属、Paenibacillus属、Lysobacter属の分離株のほとんどはキチン分解能を示した。一方、Microbacterium属とBacillus属の分離株の半分以上はキチン分解能を示さなかった。(4)キチン添加培養土壌から分離された主要な細菌属のうち、半分以上の分離株が抗菌活性を示したのはStreptomyces属のみであった。
3: やや遅れている
抗菌物質の解析、および、キチン分解細菌とキチン非分解細菌の共存の意義についての解析に遅れがみられる。
平成31年度が最終年度であるので、これまでの研究成果を補い、キチン非分解細菌の生態的意義について総合的に考察できるような、実験を実施し成果を得るよう努力する。具体的には、キチン添加培養畑土壌から分離した細菌株において、主要な属で、かつ、キチン分解能を示す株の割合が少なかったMicrobacterium属とBacillus属のキチン非分解株に着目し、その抗菌活性の有無と、キチン分解細菌株の増殖やキチン分解活性の促進効果を調べる。特に、分離した細菌株のうちの一部のキチン分解能をもつものが栄養要求株であることが判明したことに着目し、それらのキチン分解細菌の増殖やキチン分解活性、さらには抗菌活性に対する、キチン非分解細菌株の効果を検証する。
抗菌物質の分析とキチン分解細菌とキチン非分解細菌の共存時の実験解析が遅れているため次年度使用額が生じた。次年度(平成31年度)にこれらの遅れを取り戻し、使用する。
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