研究課題/領域番号 |
16K07650
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研究機関 | 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構 |
研究代表者 |
江口 定夫 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 農業環境変動研究センター, ユニット長 (30354020)
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研究分担者 |
中島 泰弘 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 農業環境変動研究センター, 上級研究員 (10354086)
山口 紀子 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 農業環境変動研究センター, 上級研究員 (80345090)
須藤 重人 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 農業環境変動研究センター, 上級研究員 (40354071)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | pH / 腐植 |
研究実績の概要 |
土壌中の亜硝酸イオン及び他の無機態窒素(アンモニウムイオン、硝酸イオン)を同時に抽出する上で、従来の高濃度中性塩(塩化カリウム)溶液を用いた抽出方法では、土壌から抽出される交換酸度によって懸濁液pHが低下するため、高pH条件下では揮散するアンモニアの損失を防ぐことが出来るという利点があった。一方、欠点は、懸濁液pHの低下により(例えば、pH5.5程度以下)、亜硝酸イオンの化学的分解による亜硝酸ガスの生成・揮散が顕著となり、亜硝酸イオンが抽出液中から損失することである。昨年に引き続き、腐植含量及び粘土鉱物組成が大きく異なる土壌試料について、様々な溶液による亜硝酸イオンの抽出を行ったところ、土壌からの亜硝酸イオン抽出には、懸濁液が低pHとなる中性塩や高pHに調整した塩溶液よりも、高pHの希アルカリ(水酸基)溶液が適していること、また、アルカリ金属の種類によって亜硝酸イオン抽出率が異なることが示された。抽出液のろ液中の亜硝酸イオンの定量法については、腐植をある程度以上含む土壌では、抽出される腐植酸による影響を抑えるため、比色法の前に腐植酸を除去する方法の有効性について、現在検討を進めている。一方、主な調査対象圃場である黒ボク土野菜畑の深層に出現する凝灰質重粘土層付近は腐植含量が低く、従来の比色法とイオンクロマトグラフ法でほぼ同等の定量値が得られた。この深層における亜硝酸及び硝酸イオン含量を直接採土によって時期別に測定(希アルカリ抽出、イオンクロマトグラフ定量)すると共に、ポーラスカップ吸引法により採取した土壌水中の亜硝酸及び硝酸イオン濃度を測定し、亜硝酸イオン/硝酸イオンのモル比に着目して、その季節変動や地下水位変動の影響に関する考察を進めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨年に引き続き、腐植含量、粘土含量、粘土鉱物組成等が大きく異なる土壌試料を対象として、中性塩溶液、アルカリ性に調整した塩溶液、アルカリ金属種の異なる希アルカリ溶液、純水等の異なる溶液によって土壌中の亜硝酸イオンの抽出法を検討を進め、土壌中の亜硝酸イオンの抽出に適した条件について、およそ特定することが出来た。また、抽出液中の亜硝酸イオンの定量法については、比色法とイオンクロマトグラフ法の比較を進め、土壌特性によっては両方でおよそ同等の結果が得られることが示され、前処理として腐植を除去する方法の有効性について、さらなる検討が進められた。さらに、主な調査対象圃場における深層土壌中の亜硝酸イオン濃度の変動要因について、硝酸イオン濃度とのモル比や地下水位変動に着目した検討が進められた。
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今後の研究の推進方策 |
土壌からの抽出液中の亜硝酸イオン濃度の定量法について、前処理として腐植酸を除去する方法の有効性についての検討をさらに進め、土壌特性との関係や適用性に関する整理を行う。主な調査対象圃場においては、特に深層土壌における亜硝酸イオン濃度の実態把握及び変動要因の解析を進める。得られた研究成果については、国際研究集会等において成果発表を行うと共に、最終的な成果取りまとめに向けて、国内外の研究者等との意見交換・情報交換を行いブラッシュアップを図る。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額が生じた理由は、亜硝酸イオン含量を測定するための様々な土壌試料の入手、抽出液作成用の試薬及び機器分析用の各種試薬・消耗品等の使用量、様々な実験に伴う作業効率の向上等により、消耗品費、旅費、賃金等にかかる費用が節約できたためである。 使用計画としては、次年度は最終年度であり、様々な腐植含量、粘土含量及び粘土鉱物組成を有する土壌中における亜硝酸イオン濃度の定量法について、最終的な結論及び適用法の整理を行うための諸実験を進めるために必要な実験補助員の賃金、国際研究集会での発表にかかる費用等を計画している。
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