研究課題/領域番号 |
16K07651
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研究機関 | 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構 |
研究代表者 |
乙部 和紀 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 中央農業研究センター, 主席研究員 (50355517)
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研究期間 (年度) |
2016-10-21 – 2019-03-31
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キーワード | 過酸化水素 / 耐湿性 / 根 |
研究実績の概要 |
本研究は、過酸化水素(HP)の酸素供給能に着目して「根からのHP漏出性は耐湿性機序に関わる」との仮説を設定し、これを検証することを目的とする。平成29年度は当該仮説検証手段として、系統毎の耐湿性データが公表されているMi29とZea nicaraguensisとの染色体部分置換系統(IL)について、種子根HP漏出性と耐湿性との関連性を調べた。 根の目視観察が容易なシリカヒドロゲル培地を用い、養分・温度・光環境を同一条件にそろえて発芽させた幼苗に対して湛水栽培期間の有無によるIL毎の根HP漏出量変化を、アミノアンチピリン呈色法を用いて調べた。湛水の有無により漏出量が有意に増加する群と減少する群が認められたが、増加率と既報の耐湿性指標(Leaf Injury Score、LIS)との相関は認められなかった(r < 0.1)。ただし、漏出性の増加率や湛水時の漏出量と、既報の通気組織形成指数(Aerenchyma score)との間には傾き正の比例関係が示唆され、通気組織形成にはHPが関与しているとの既往知見と整合性のあるデータが得られた。 以上のように、IL毎に特徴的な漏出性の強弱が認められ、漏出性の一遺伝子支配を示唆する傾向は認められない反面、漏出性は湿害耐性とも関連する通気組織形成と関わる可能性が示唆されたことから、細胞壁の物質透過性や活性酸素産生能等に関わる複数の遺伝子が関与する耐湿性機序に関わっているものと推察された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
過年度の試験で、本研究手法により根からのHP漏出性の差異が簡便に捉えられることが示されたので、今後のデータ収集・補完により、仮説の検証が可能と考えられ、おおむね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
耐湿性と漏出性の関係が不明瞭であったのは、湛水時の根圏環境が十分に嫌気的でなかったことも一因と推察されたため、平成30年度計画では、ヒドロゲル培地の稠密度を向上させるとともに、照光強度を上げてHP漏出量を増やすことで、IL毎の差異の強調を目指し、仮説検証に向けたデータ補完を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初計画では、各ILの自殖種子を採取し、これを用いて得られる試験データに基づいて論文を作成する予定であったが、増殖が不調に終わり、補完データも得られなかったため、論文作成に至らず、次年度使用額が発生した。 次年度使用額268,953円は、作成予定であった論文の校閲料・投稿料、追加試験に要する人件費等、次年度に申請する金額と併せて、研究計画遂行のために使用する。
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