研究実績の概要 |
本研究計画では、「栄養枯渇がリボソームの量または機能の抑制をもたらし、この抑制が分裂酵母の寿命延長を起こす」と仮説を立て、その解析を行った。本研究計画では、カロリー制限などの栄養枯渇による寿命延長はリボソームの量またはその機能の低下に起因するのではないかと予想し、この仮説の検証を行うとともに、これを応用することで酵母細胞の寿命の制御を試みることを予定していた。平成28年度には、具体的に以下を行う予定であった。 (1)分裂酵母の硫黄枯渇応答を調べる(2)栄養枯渇による寿命延長がリボソーム抑制によるものか検証する(3)リボソームを標的とし、酵母細胞の寿命の制御を試みる 解析の結果、(1)は、ecl1遺伝子を直接制御している転写因子として、Zip1を同定することに成功した。(2)は、複数のリボソームタンパク質をコードする遺伝子の分裂酵母欠損株が長い経時寿命を持つことを証明することができた。同時に、寿命を延長させる栄養枯渇条件、つまり炭素源、窒素源、硫黄源の枯渇した条件では、いずれにおいてもリボソームタンパク質量や活性が低下していることが示唆された。(3)は、リボソームの生合成を阻害する薬剤の添加により、分裂酵母が長生きすることが証明された。 これら結果を、以下のように論文にまとめ、現在印刷中である。 Sulfur restriction extends fission yeast chronological lifespan through Ecl1 family genes by downregulation of ribosome. Ohtsuka H, Takinami M, Shimasaki T, Hibi T, Murakami H, Aiba H. Mol Microbiol. 2017 Apr 7. doi: 10.1111/mmi.13686. [Epub ahead of print]
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