研究実績の概要 |
本研究計画では、「栄養枯渇がリボソームの量または機能の抑制をもたらし、この抑制が分裂酵母の寿命延長を起こす」と仮説を立て、その解析を行った。本研究計画では、カロリー制限などの栄養枯渇による寿命延長はリボソームの量またはその機能の低下に起因するのではないかと予想し、この仮説の検証を行うとともに、これを応用することで酵母細胞の寿命の制御を試みることを予定していた。令和元年度は、新たな共同研究者との連携が可能となり、いくつか新規な結果を得ることができた。具体的には以下の3つになる。 1. 硫黄枯渇による細胞形態のスクリーニングが完了し、硫黄枯渇時に働く候補遺伝子が同定された。2.学習院大学の赤沼先生との共同研究の結果、硫黄枯渇を含むさまざまな条件下のリボソームの状態を、ポリソーム解析を通して観察し、栄養枯渇下におけるEcl1ファミリー遺伝子の新たな働きについてヒントが得られた。3.名古屋大学生命農学研究科の北浦先生と共同研究が始まり、栄養枯渇時の細胞内のアミノ酸を含む低分子化合物の量が明らかになった。 現在は、1.によって得られた候補のうち、Ecl1の分子機構解明に迫れる可能性が高い因子の解析を行っている。また、昨年度得られた結果から得られたデータをもとに、以下の論文を報告した。 Mol Genet Genomics. 2019 Dec;294(6):1499-1509. doi: 10.1007/s00438-019-01592-6. "Leucine depletion extends the lifespans of leucine-auxotrophic fission yeast by inducing Ecl1 family genes via the transcription factor Fil1." Ohtsuka H, Kato T, Sato T, Shimasaki T, Kojima T, Aiba H.
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