研究課題/領域番号 |
16K07666
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研究機関 | 山口大学 |
研究代表者 |
高坂 智之 山口大学, 創成科学研究科, 助教 (70500453)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | プロピオン酸酸化 / コハク酸デヒドロゲナーゼ / プロピオン酸酸化細菌 / 水素放出 / 膜電位 |
研究実績の概要 |
今年度は 1) コハク酸酸化の膜電位要求性の細胞での確認、 2) 反応に必要な補因子の探索、 3)膜小胞や反転膜小胞による解析、4-1) コハク酸脱水素酵素(SDH)の解析の実施を計画し、3) 以外の項目は研究を実施した。さらに、4-3) 大腸菌を利用したSDHの発現と解析に前倒しで着手した。1) では、SI株が単独の菌体でプロピオン酸から水素を放出することを確認したのち、その状態において膜電位を消失させるCCCPによってプロピオン酸からの水素放出が抑制されることを示した。さらに、SI株の膜電位が非常に低いながらもCCCPによって影響される可能性を示唆した。2) では、SI株によるプロピオン酸からの水素放出をいくつかの補酵素の添加によって促進することが出来る可能性を示唆した。ただ、促進効果の再現が低いことから丁寧な検証を進める必要がある。4-1) では、SI株を培養した菌体を破砕後、超遠心により膜を分離した画分を用いて、SDH1及びSDH2の解析を実施した。まずコハク酸酸化活性が膜画分のみならず可溶性画分にも存在することを示した。さらに膜画分は電子受容体であるQ1の還元を行えたことから、SDH1はキノン還元活性及びキノン結合ドメインがあることが示唆された。一方、可溶性画分ではQ1還元活性が見られず、SDH2はキノン結合ドメインがないことが示唆された。また、Native-PAGEでの活性染色により、膜画分と可溶性画分で異なる分子量での活性が確認された。一方、NADHを電子供与体とするフマル酸還元活性が可溶性画分で確認されたことから、SDH2はフマル酸レダクターゼとしての機能を有する可能性が示唆された。4-3) では、遺伝子を発現させる大腸菌の選定とプラスミドの構築を試みたが、まだ完成には至っていない。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨年度の計画の進捗状況は、1)、2)、及び4-1) をほぼ実施した。3) の実施は出来なかったが、研究計画 4-3) を前倒しで実施し始めていることから、概ね計画通りに進んでいると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
現在のところ、次年度は申請時に計画した研究内容を実施していく予定である。特にSDHを含むSI株の遺伝子を大腸菌で発現させる系の構築を精力的に実施したい。遺伝子を発現させる菌株の選定をさらに行いながら、SI株の遺伝子を機能的に発現可能な系とプラスミドの構築を目指す。一方、SDH酵素の精製や反転膜小胞による解析を可能にするために、SI株細胞の大量培養と保存を行いSI株の酵素の精製を行うための基盤を構築する。そして、酸素感受性を示すと予想されるヒドロゲナーゼの機能解析を行うための生化学的及び異種発現に関する情報の収集と実験系の構築を早期に開始する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究対象とする微生物の取り扱いに使用している嫌気チャンバーに不具合が発生したため、その修理のために他の実験に使用する予定であった消耗品費を機器の修理費として予算を調整していたが、業者による部品及び故障箇所の特定に前年度中に至らなかった。そこで、修理費を次年度に繰り越した。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度この予算は、嫌気チャンパーの修理に使用する予定である。修理費が少なく済めば、機器を使用するための混合ガスボンベの購入費用に充てる予定である。
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