研究実績の概要 |
分泌経路で機能するタンパク質の欠損もしくは過剰発現によりタンパク質輸送にどのような影響を及ぼすのか研究している。最終的には、分泌経路の機能を増強する条件を見つけ、分裂酵母を用いた有用タンパク質生産の効率化を図ることを目指している。 本研究ではゴルジ体画分のTOF-MS解析より、配列内にcoiled-coil領域を持つ機能未知のタンパク質Gmp1から4を取得した。互いに相同性が高いことからGmp1, Gmp3, Gmp4に着目した。GmpファミリーにGFPを付加し過剰発現させたところ、細胞内の数か所に集約したドットが観察され、凝集体を形成していた。その局在を明らかにするため、分泌経路内のオルガネラマーカータンパク質と共発現させたところ、後期分泌経路のオルガネラであるエンドソームにおいて、ゴルジ体への逆行輸送を担っているレトロマーの構成タンパク質の一つ、Vps35とGmp1過剰発現時の凝集体の局在が一致した。さらに、Gmp1の過剰発現によりエンドソーム画分の肥大化が観察された。また、yeast two-hybrid法により、Gmp1, Gmp3, Gmp4がそれぞれ相互作用しており、Gmp1とGmp3, Gmp3とGmp4が相互作用していることが示され、Gmpファミリーが複合体を形成していることが推察された。Gmp過剰発現時の凝集機構を明らかにするため拡散条件を検討した結果、微小管合成阻害剤TBZの添加や、窒素飢餓条件にて、凝集体が細胞質中に拡散することが観察された。 Gmpファミリーの過剰発現によりエンドソームの肥大化が誘導されることが証明されることで、エンドソームを介した選別輸送の機能促進や、ストレス応答の解明にもつながると予想している。さらに、エンドソームの大きさが変化することによる物質生産の効率化が考えられ、細胞種を超えた物質生産への適用に繋がることが期待できる。
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