研究課題/領域番号 |
16K07672
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研究機関 | 鹿児島大学 |
研究代表者 |
二神 泰基 鹿児島大学, 農水産獣医学域農学系, 准教授 (60512027)
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研究分担者 |
玉置 尚徳 鹿児島大学, 農水産獣医学域農学系, 教授 (20212045)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 白麹菌 / クエン酸 / トランスポーター / RNA結合タンパク質 / クエン酸合成酵素 |
研究実績の概要 |
本研究は、白麹菌のクエン酸高生産機構を解明することを目的として行った。白麹菌を含む子嚢菌門のゲノムにおいてクエン酸合成酵素遺伝子(citA)の近傍に保存されている推定クエン酸-オキソグルタル酸対向輸送体遺伝子(yhmA)と推定RNA結合タンパク質遺伝子(nrdA)がクエン酸高生産に関与すると推定し、これらを解析対象とした。 まず、白麹菌においてyhmA破壊株と推定クエン酸-リンゴ酸交換輸送体をコードするctpA遺伝子の破壊株を構築した。その結果、yhmA破壊株は野生株と比較して生育が遅延し、分生子形成能が低下した。また、ctpA破壊株は分生子形成能が低下し、加えて低温培養条件(25℃)において生育が遅延した。各破壊株の菌体量あたりのクエン酸生産量を比較したところ、yhmA破壊株では野生株の約30%、ctpA破壊株では約40%に低下した。以上の結果から、いずれもクエン酸高生産に関与することが示唆された。また、出芽酵母においてクエン酸輸送体をコードするyhm2(白麹菌yhmAホモログ)の遺伝子破壊株を構築し、白麹菌のYhmAを発現させたところ、yhm2破壊株の表現型である酢酸を炭素源とする最小培地での生育遅延が改善したことから、白麹菌のYhmAは出芽酵母のYhm2の機能を相補することが示唆された。さらに、各破壊株において、GFP融合タンパク質を発現させたところ、破壊株の表現型を相補し、YhmA-GFPおよびCtpA-GFPはいずれもミトコンドリアに局在することが示唆された。 次に、白麹菌を宿主としてSタグを付加したYhmAとCtpAをTet-Onプロモーター制御下で発現し、タグ精製する系を構築した。さらに、白麹菌においてTet-Onシステムを用いたnrdA遺伝子のコンディショナル破壊株を構築した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
来年度以降に予定していた推定クエン酸輸送体タンパク質の精製系の構築がうまくいったため“当初の計画以上に進展している。”とした。
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今後の研究の推進方策 |
来年度はYhmAの生化学的諸性質、NrdAのクエン酸生産における役割、およびNrdAのRNA相互作用を解析する。まず、YhmAとCtpAがクエン酸輸送体であるかどうかを明らかにするために、精製したYhmA-SとCtpA-Sをリポソームに再構成し、14C標識クエン酸を用いた輸送活性を測定する。その際に、リンゴ酸、オキソグルタル酸、cis-アコニット酸などの有機酸を対向基質として検討する。また、YhmAとCtpAの生理的役割を解明するため、各破壊株における表現型(栄養要求性、各種ストレス耐性など)に加えて細胞内のレドックス状態を調べる。 次に、nrdAのコンディショナル遺伝子破壊株を用いてnrdAの発現量を低下させた際のクエン酸生成に及ぼす影響を調べる。また、NrdAと相互作用するmRNAを同定するために、RNA immunoprecipitationを行う。その準備実験として、NrdA-Sタグ融合タンパク質発現系を構築する。
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