研究課題
本研究課題は、白麹菌のクエン酸高生産機構の一端を解明することを目的として行った。白麹菌のゲノムにおいてクエン酸合成酵素遺伝子（citA）の近傍に保存されているクエン酸-オキソグルタル酸対向輸送体遺伝子（yhmA）とRNA結合タンパク質遺伝子（nrdA）がクエン酸生産に関与すると推定し、これらの機能解析を行った。昨年度、yhmAとクエン酸-リンゴ酸交換輸送体をコードするctpAの二重破壊条件が最小培地では合成致死であり、リジン要求性となることを明らかとした。本年度は、ctpAとyhmAの二重破壊条件において、細胞質のAcetyl-CoAが顕著に減少することを明らかにした。この現象は、CtpAとYhmAによってミトコンドリアから細胞質に輸送されるクエン酸がATP citrate lyase（ACL）によるAcetyl-CoA合成に用いられているためと考えられた。また、リジン合成の初期反応にAcetyl-CoAが必要とされるために、ctpAとyhmAの二重破壊条件において細胞内リジン濃度が低下して、リジン要求性となったと考えられた。実際に、同条件において細胞内のリジン濃度が低下することを確認した。以上の結果から、CtpAとYhmAによるミトコンドリアから細胞質へのクエン酸輸送がAcetyl-CoAの合成に重要な役割をもつことが明らかになった。次に、白麹菌においてnrdA遺伝子の破壊株を取得できなかったことから、nrdA遺伝子は必須遺伝子であると考えられた。そこで、Tet-Onシステムを用いてSタグ融合nrdAのコンディショナル発現株を構築した。また、抗Sタグ抗体を用いたRNA immunoprecipitation解析を行い、取得されたRNAを次世代シーケンス解析に供した。これにより、NrdAと相互作用するRNA分子種の候補を得た。
すべて 2019 2018
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (7件) (うち国際学会 1件)
Journal of bioscience and bioengineering
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