海洋性細菌Micrococcus luteus K-3株由来グルタミナーゼ(Mglu)は4M NaCl存在下でもNaCl非存在下での活性と同様の活性を示す耐塩性酵素である。この酵素は2M 以上のNaCl添加によって242から248番目のsalt-loopと名付けた活性中心残基Tyr243を含む領域の構造が大きく変化する。同濃度のNaCl添加により失活するBacillus subtilis由来の相同酵素はNaCl添加によって構造変化しない。本研究では、この構造変化が耐塩性に重要な役割を果たすと予想し、構造変化と耐塩化機構との関係の解明を試みた。この領域のアミノ酸残基であるD244及びA246を部位特異的変異の導入により、それぞれアラニン及びセリンに置換した変異型酵素D244A及びA246Sを作製した。変異型酵素D244A及びA246Sともに野生型酵素の場合と比較して比活性がそれぞれ10及び50分の1に低下していた。これらの変異型酵素はともに4M NaCl存在下での活性が大きく低下しており、耐塩性が低下していた。さらにMgluはtris緩衝液中では高い耐塩性を示す一方で、リン酸緩衝液中では活性と耐塩性が大幅に低下する。変異型酵素D244A及びA246Sはともにリン酸イオンによる阻害を受けにくくなり、A246Sの耐塩性はリン酸イオン存在下でも大幅に低下しなくなった。これらのことからSalt loopのアミノ酸残基はMgluの耐塩性に関係することが示唆された。今後はこれらの変異型酵素のNaCl添加による構造変化をNaCl存在下及び非存在下での立体構造解析により明らかにする予定である。
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