研究課題/領域番号 |
16K07678
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研究機関 | 金沢工業大学 |
研究代表者 |
小田 忍 金沢工業大学, バイオ・化学部, 教授 (00503963)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 界面バイオリアクター / 液面固定化システム / 二次代謝物生産 / 微生物変換 / 浮上性微粒子 / 放線菌 / 酵母 / 細菌 |
研究実績の概要 |
昨年度に引き続き、浮上性微粒子(MS)として松本油脂製薬(株)製のMFL-80GTA、GCA、積水化学工業(株)製のAdvancel HB-2051の3者について、浮上速度と菌体捕集率等の評価を行った。その結果、HB-2051の浮上速度が前2者に比べてかなり遅く、菌体捕集率も約10%低いことが判明した。しかし、Streptomyces chattanogensis NBRC 12754による抗生物質natamycinの発酵生産においては、全3種のMS間で有意な差は認められなかった。松本油脂製薬(株)製の2種のMSで培地の大幅なpH上昇が生じることを踏まえ、HB-2051を使用MSに選定した。 次に、HB-2051から界面活性剤が培地中に漏出することが確認されたため、これを洗浄除去したMSと未洗浄のものとでnatamycinの生産性を比較した。その結果、未洗浄の培養系でnatamycinの生産性が高くなることを見出した。この界面活性剤には同株に対する毒性は認められず、逆に発酵生産されたnatamycinを菌体外に抽出する好ましい効果があると推測された。他の公知の界面活性剤についても同様の効果の有無を確認中である。なお、HB-2051を他の酵母や細菌に適用した場合に弱い増殖阻害が認められた。従って、MSの洗浄と界面活性剤の効果とを峻別して適宜最適な組み合わせを図る必要があると思われた。なお、erythromycin生産への応用研究も開始した。 MS間を粘着させるバインダー材(BM)に関しては、日本製紙製のSunrose SLD-FM (carboxymethyl cellulose)を選定のうえ、それの平均粒径の影響を調べた。その結果、25 μmメッシュパスしたBMを用いることでMS層が物理的により強固になること、その結果、natamycinの生産性が向上することを見出した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨年度までの検討に引き続き、浮上性微粒子(MS)とバインダー材(BM)についての詳細な性状確認を行い、概ねそれらの概要を把握することができた。水中でのpH挙動や配合界面活性剤の影響、MSの浮上性並びに菌体捕集率、BMの長期安定性並びに粘着効果等の諸性質を把握できた。 上記の知見を踏まえて、いよいよ物質生産への応用研究を発展させた。ここまでに、酵母や放線菌を使った微生物変換(酸化、アセチル転移反応)での実証試験に加えて、放線菌による抗生物質生産での実証試験に入っている。Natamycinの発酵生産についてはほぼ順調に試験が進行し、昨年度下期より、第二のアイテムとしてerythromycinの発酵生産試験も開始している。これらの実証試験をさらに進捗させ、さらには適用スケールの大型化を達成していきたい。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度に当たる今年度は、昨年度までに達成できた浮上性微粒子(MS)並びにバインダー材(BM)の性状と、それらの最適条件を活かしての、実証試験を完結させていきたい。微生物変換については5種もの実証試験で良好な成績を収めることができ、現在、オリジナル論文を投稿中である。発酵生産への応用に関しては、放線菌を用いた2種の抗生物質の生産試験を実施中であり、着々とデータが蓄積されつつある(2報目の論文を執筆準備中)。今年度はさらに、バイオリアクターの大型化を図り、本システムの有用性の更なる確認に努めていきたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
前年度消耗品の使用額が予想値を下回ったため。
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