研究課題
生体内糖質代謝に関与する糖質加リン酸分解酵素(ホスホリラーゼ)による糖質合成収率は極めて高く、産業上有用な酵素になり得る。しかしながら、既知のホスホリラーゼは他の糖質関連酵素に比べて報告例が少なく、今後生産可能な糖質のバリエーション拡大には新たな反応特異性を示すホスホリラーゼの発見が必須である。近年ゲノム全塩基配列の解読を目標としたゲノムプロジェクトが様々な生物種を対象に実施されており、今後新規なホスホリラーゼの発見の可能性は極めて高い。本研究では、バイオインフォマティクス手法及びメタゲノミクス解析を駆使することにより、生体内糖質代謝を理解する上で生物学的意義から学術的に重要な新規ホスホリラーゼの網羅的探索を行い、得られた新規酵素が触媒する加リン酸分解反応時の基質特異性およびオリゴ糖合成反応時の糖受容体特異性の解明を通して、オリゴ糖ライブラリー構築を試みる。今年度は、バイオインフォマティクス手法を活用することで昨年度発見した新規なホスホリラーゼの酵素化学的諸性質(最適pH、pH安定性、温度安定性、基質特異性)の決定、様々な糖受容体基質を用いた新規ヘテロオリゴ糖の合成および構造解析を行った。また、複数の環境中から回収したメタゲノムおよび糖質関連酵素を豊富に有する微生物ゲノムを制限酵素処理により断片化し、大腸菌発現用ベクターに組み込むことでメタゲノムライブラリーを作製し、現在新規ホスホリラーゼを探索中である。
2: おおむね順調に進展している
バイオインフォマティクス手法を活用したホスホリラーゼの網羅的探索の結果得られた新規酵素の性質決定およびオリゴ糖ライブラリーの拡充も達成されており、当初の計画通りの研究進展が見込まれる。メタゲノムをスクリーニング源とした新規酵素探索についても、順調に進行している。
今後、得られた新規ホスホリラーゼのX線構造解析を行い、構造と機能の相関解明に取り組む。また、安価に入手可能な天然糖資源から目的オリゴ糖への高収率変換技術の開発にも取り組む。
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