研究課題/領域番号 |
16K07690
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
伊福 健太郎 京都大学, 生命科学研究科, 助教 (50359783)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 光合成 / 光化学系 II / 表在性タンパク質 / 緑色植物 / クラミドモナス / タンパク質相互作用 |
研究実績の概要 |
1)高等植物独自の光化学系II (PSII) 表在性タンパク質であるPsbPのN末端配列が、PSIIの副次的電子伝達に関わるCyt b559の酸化還元電位を調節することをin vitroで証明した。 2)クラミドモナスpsbP欠損株の変異位置を同定し、Hisタグ配列を付加したpsbP遺伝子の導入で機能相補に成功した。さらに導入PsbP-Hisを利用してPSII-LHCII超複合体の精製に成功した。アフィニティ精製されたPSII複合体をSDS-PAGEにより分離後、各バンドに含まれるタンパク質をLC-MS解析に供した。その結果、精製PSII複合体には主要なPSII膜内在性サブユニットに加え、全ての表在性サブユニット、ならびに各種アンテナタンパク質が含まれていることを確認した。続いて、アフィニティ精製PSIIサンプルをネガティブ染色し、電子顕微鏡解析を行った。その結果、集光アンテナタンパク質複合体を結合したC2S2M2型、あるいはC2S2M2L2型であると考えられるPSII-LHCII超複合体の像を検出することができた。 3)上記のクラミドモナス入れ戻し実験系を用いて、PsbPのN末端配列がPSIIのアッセブリーに重要であることをin vivoで証明した。 4)PSII複合体におけるPsbPの結合様式を精密化するため、in vitro再構成実験系をPELDOR法と組み合わせ、PSII内部のTyrD・ラジカルとPsbP間の分子距離を測定することを試みた。PsbPのアミノ酸配列に、その機能に影響しないようにCys残基を導入した変異PsbPタンパク質を数種類作製し、導入したCys残基側鎖にラベル化剤4-Maleimido TEMPOを共有結合させることで、PsbP分子中の様々な位置に不対電子を導入した。これらラベル化PsbPをPSII膜に再構成し、PELDOR法により、TyrD・とPsbPに導入したラベル間の距離を測定した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
我々が開発した緑藻クラミドモナスを用いたPsbPの機能相補系は、PsbP-6xHisを利用したPSII-LHCII超複合体の精製に加え、変異型PsbPのin vivoでの機能解析を可能とする、有効な実験系となる。本年度、この系を用いてPsbPのN末端配列を介した相互作用がPSIIの構造と機能に及ぼす影響を解析し、論文発表と学会発表を行うことができた。また、PSIIとの結合を増強することができるPsbPの変異についても新しい知見を得つつある。以上の理由により、研究は計画以上に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
1)PsbPとPSIIの相互作用様式について、さらなる精密化を目指すとともに、PsbPとPSIIの相互作用が水分解反応に及ぼす影響に関して、in vitro再構成実験と形質転換によるin vivo系の両面から解析を推進する。 2)緑色植物で独自に発達したPsbPとPsbQについて、分子進化の観点からホモログも含めた機能解明を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究計画が順調に進み、消耗品費を節約できたため。
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次年度使用額の使用計画 |
さらに研究を発展させるために、追加の消耗品費として使用する。また、これまで得られた成果の論文発表や学会等での発表の費用として使用する。
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