研究課題
本研究は,耐熱性のシトクロムc',PHCPを改変してNO結合能を向上することを目的とする。そのモデルとなるのが,NOに対する結合能が高いことが予想される好酸性ユスリカのモグロビンである。・平成29年度当初計画にしたがって,好酸性ユスリカヘモグロビンの性質を明らかにする研究を実施した。具体的には,平成28年度の研究で見出した好酸性ユスリカC. sulfurosusの幼虫のヘモグロビンを対象とした。pH7よりもpH3で高発現するヘモグロビン遺伝子を合成し,それを大腸菌を宿主に発現を試みたが,ヘムを包含するホロ蛋白質としてではなく,ヘムが結合しなアポ型蛋白質に成功した。大腸菌で発現したアポ型ヘモグロビンを調製し,試験管内でヘムを付加することでホロ型化を図ったが,成功しなかった。糖鎖修飾の制約の可能性があり,ユスリカヘモグロビンをNO結合高結合能のモデル蛋白質とする方針を見直した。・そこで,平成28年度から以上の研究のバックアップとして実施していた研究計画に注力した。具体的には,PHCP以外のシトクロムc'を数種類調製し,それらのNO結合能を系統的に調べることにした。PHCPを含めて熱安定性が異なる5種類のシトクロムc'のNO結合能を調べたところ,安定性が低くなればなるほどNO結合能が向上することを見出した。5種類の立体構造から,ヘム周辺の非共有結合(疎水結合や水素結合)が見られないものほどNO結合能が高いと推測できるまでに至った。
2: おおむね順調に進展している
当初予定していた好酸性ユスリカヘモグロビンを対象とする研究は計画通りとはならなかったが,バックアップとして平成28年度から実施していた多様なシトクロムc'を用いた実験が順調に進んでいるので「おおむね順調に進展している」と進捗状況を判断した。
平成30年度は,平成29年度に明らかにした多様なシトクロムc'を用いた実験結果をさらに深化させる。具体的には,平成29年度はNO結合能を吸光度変化の平衡論で追っていたが,今後は,速度論の面から明らかにする。実験装置は,すでに研究室に設置しているため,すぐに実施できる状態である。さらに,NO結合能の高度化に寄与するアミノ酸残基をPHCPに導入して,耐熱性を保ちつつ,NO結合能が向上する変異体を作成するのことで,本研究のまとめとする。
(理由)平成29年度当初配分額はほぼ執行している。次年度使用額が生じた理由は,平成28年度に追加交付を受けて採択され,その時点(10月)までに必要物品を購入したことによる。(使用計画)バックアップとして継続していた実験をメインに進める。そのためには,遺伝子操作試薬等の購入に使途し,さらに今年度は最低でも3報の国際誌に投稿予定のため,そのために使用する予定である。
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すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件) 学会発表 (6件) (うち国際学会 1件、 招待講演 1件) 備考 (1件)
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http://home.hiroshima-u.ac.jp/gsbstop/interview/ja/sanbongi.html