本研究は,耐熱性のシトクロムc',PHCPを改変してNO結合能を向上することを目的とする。そのモデルとなるのが,NOに対する結合能が高いことが予想される好酸性ユスリカのモグロビンである。 平成30年度当初計画にしたがって研究を実施し,当初の全体目的を達成することができた。すなわち,平成30年度にはPHCPを改変してNO結合能を向上することに成功した。ただし,平成29年度までは好酸性ユスリカヘモグロビンをモデルにNO結合能を向上しようとしていたが,それを断念し,並行してバックアップ研究として行っていた研究計画に従って当初の全体目的を達成できた。具体的には,PHCP以外のシトクロムc'を数種類調製し,それらの NO結合能を系統的に調べることにした。PHCPを含めて熱安定性が異なる5種類のシトクロムc'のNO結合能を調べたところ,安定性が低くなればなるほどNO結合能が向上することを見出した。5種類の立体構造から,ヘム周辺の非共有結合(疎水結合や水素結合)が見られないものほどNO結合能が高いと推測できるまでに至っていた(平成29年度末時点)。 平成30年度は,実際にPHCPに変異を導入し,NO結合能の指標としてNO結合定数を上昇させることに成功した。得られた変異PHCPの安定性は野生型に比べて低下するものの,50℃までは十分に安定であり,安定でかつNO結合能が改善された蛋白質の構築に成功した。 今後の展開として,得られたPHCP変異体のNOセンサー蛋白質としての用途研究に供することを考えている。
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