研究実績の概要 |
FETタンパク質ファミリー(FUS, EWS, TAF15)は、高いドメイン構造相同性をもち、転写、スプライシング、マイクロRNA生合成、mRNAの核外輸送と代謝、翻訳など、多面的に遺伝子発現調節に関与することが示唆されているが、そのマルチ機能制御メカニズムは不明である。また、FETタンパク質ファミリーは前頭側頭葉変性症の異常封入体形成タンパク質として同定されているが、異常封入体形成メカニズムは不明である。本研究の目的は、FETタンパク質ファミリーの生理機能スイッチングに関与する翻訳後修飾を同定することにより、そのマルチ機能制御メカニズムに迫ることである。平成28年度の研究実施計画に基づき、まずFETタンパク質ファミリーのうちEWSに注目し、マウス胚性腫瘍細胞株p19を用いて神経分化誘導に伴う神経細胞の出現に伴う翻訳後修飾の変動を解析し、EWSのグリコシル化分子種が増加することを見出した。次に、FETタンパク質ファミリーに起こるグリコシル化分子種の化学量論を検討し、神経芽腫細胞株Neuro-2a, SH-SY5Y、およびグリア芽腫細胞株A172におけるEWSのグリコシル化は動的に制御されていること、CD1マウス脳抽出液におけるEWSの大半がグリコシル化分子種であることを見出した。また、非神経系の培養細胞株であるHeLa, HEK293T細胞においてもEWSの大半がグリコシル化分子種であった。一方、これら全ての解析において、FUSならびにTAF15のグリコシル化分子種は検出限界以下であり、FETタンパク質ファミリーのうちでEWSのみが選択的にグリコシル化されており、1分子のEWSにつき2-3サイトのO-GlcNAc修飾を有する分子種が大半を占めることを明らかにした。
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