研究実績の概要 |
本研究の目的は、FETタンパク質ファミリーの生理機能スイッチングに関与する翻訳後修飾を同定することにより、そのマルチ機能制御メカニズムに迫ることである。平成30年度の研究実施計画に基づき、平成28年度に実施した研究において見出した、FETタンパク質のうちでEWSに選択的なグリコシル化に注目し、グリコシル化サイトの絞り込みを行った。その際、平成29年度に実施した研究において見出した、EWSの主要グリコシル化サイトを含むlow complexityドメイン内の領域に注目し、他のタンパク質に関する既知のO-GlcNAc修飾サイト周辺配列をもとにEWSのグリコシル化サイトを予測した。そして、予測したセリン、スレオニン残基をアラニン置換したEWS変異体を作成し、グリコシル化の有無を解析した。その結果、101, 106, 107, 108番目のスレオニン残基, および149番目のセリンをアラニン残基に置換した変異体EWSにおいては、野生型に比べ格段にグリコシル化分子種の割合が低下した。よって、これらの残基には、FETタンパク質のうちでEWSに選択的なO-GlcNAc修飾が起こることを突き止めた。また、前頭側頭葉変性症において、EWS以外のFETタンパク質が異常封入体を形成する原因タンパク質になっている、という病態の解明に資するため、FETタンパク質の細胞ストレス耐性の精査を進めた結果、FUSとTAF15はEWSよりもストレス感受性が高いことを見出した。そして、このFETタンパク質間のストレス感受性の相違が生じるメカニズムには、分子シャペロンHSP70が関与していることを示唆する知見が得られた。
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