嫌気性アンモニア酸化(anammox)菌を利用した廃水処理は、革新的窒素除去技術であり、既に実用化の段階にある。anammox菌の代謝については不明な点が多く、我々は各素反応を触媒する未知の酵素を同定し、それらの特徴を解明してきた。この過程でanammox菌は多量のc型ヘムタンパク質・酵素を発現していることが明らかとなってきた。これらc型ヘムはタンパク質と共有結合しており、その成熟には特異な成熟系が必要とされることがわかっている。本研究では、anammox菌が有するシトクロムc成熟系System IIを対象とし、その生化学的詳細を解明することを第一の目的とした。さらに第二の目的として、SystemIIの応用によるマルチc型ヘムタンパク質発現系の実現を目指した。 平成28年度に、anammox菌KSU-1株由来のSystem II遺伝子ResBCの発現を試みたが、活性を有するタンパク質を得ることができなかった。そこで、対象のResBC遺伝子を好熱菌由来のものに変更し、同様の発現系構築を試みた。平成29年度、この発現系を用いて活性を有するResBCタンパク質を得ることができた。最終年度(平成30年度)には、ResBCタンパク質の大量調製に成功した。活性を有するResBCの結晶化を試行中である。一方、anammox菌の鉄貯蔵に関わるナノ粒子状タンパク質について、大腸菌発現系を確立し、精製試料を用いて構造生物学的研究を実施した。代表的な鉄貯蔵タンパク質のフェリチンとは異なる新奇な鉄貯蔵タンパク質であることが明らかとなった。これらより、anammox菌等が有するシトクロムc成熟系System IIの生化学的詳細の一端を解明することが出来た。
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