研究実績の概要 |
F-boxタンパク質はユビキチンリガーゼの基質認識サブユニットであり、SCF型ユビキチンリガーゼとして機能する。ヒトではおよそ70種類あるF-boxタンパク質のうち、3つのF-boxタンパク質FBXO2,FBXO6,FBXO27はN結合型糖鎖を認識する。N結合型糖鎖を持つ糖タンパク質は細胞外もしくは小胞体などの分泌経路のオルガネラの内側に存在するが、糖鎖認識F-boxタンパク質は細胞質に存在するため、両者は膜で隔てられている。糖タンパク質をユビキチン化するためには、糖タンパク質が細胞質へ出てくる必要があり、小胞体で正しい構造が取れなかった異常タンパク質が細胞質へ逆行輸送される小胞体関連分解(ERAD)に関わるユビキチンリガーゼであると考えてきた。今回の研究により、糖鎖認識ユビキチンリガーゼの新たな機能を解明した。FBXO27はミリストイル化により細胞内膜に結合しており、損傷を受けて糖鎖が細胞質へ現れたリソソームやエンドソームに効率良く集積する。特にリソソームが損傷を受けた際に細胞質へ漏れ出した糖タンパク質LAMP1,LAMP2が、FBXO27により認識され、ユビキチン化を受けることを見出した。これまで、損傷リソソームの表層にあるユビキチン鎖が目印となりオートファジーが引き起こされることで損傷リソソームが細胞内から除去されるリソファジーと呼ばれる生体防御機構に関して、どのようにリソソームの損傷が認識されるのかは不明であったが、FBXO27による糖鎖認識がひとつの機構であることが判明した。この成果はProc. Natl. Acad. Sci. USAに掲載された。
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