研究課題
基盤研究(C)
生物活性物質の中には、多量化により作用機構が変化することで活性が強化される「作用機構変化型」ともいうべきクラスター効果を示す化合物も存在する。イオノフォア天然物monensin (Mon)は八量化するとプロトンチャネルに作用機構が変化することが計算化学により示唆されている。本研究では,Monを多量体化することでより強力な細胞毒性を示すプロトンチャネルを創製することを最終的な目標とした。論文に記載されているデータを再精査したところ,Mon八量体は,二量体を基本構成単位としてそれが4つ連なったものであることに気づき,実際にこれを合成することに成功した。
天然物化学,有機合成化学
薬剤(多剤)耐性菌への対処は人類にとって喫緊の課題となっている。その一方で,新たに開発される(発見される)薬剤の種類は頭打ちの傾向にあり,新たな創薬方法論の開発が期待される。これまでは化学構造の変換による方法がもっぱら実施されていたが,物理的な効果により既存の天然物の活性強度を簡便に強化できれば, 無名の低活性天然物が強力な抗菌剤へと生まれ変わる可能性がある。これにより,薬剤候補化合物数の増加に貢献できるとともに,既存の化学構造改変法と異なる新たな創薬方法論を提示できる。