研究実績の概要 |
研究計画書に従い、水溶性クルクミン創成に向けた構造活性相関研究を行った。以前の知見からフェノール性水酸基の配置に関しては多くのデータを有するのでそれに基づき、2つのフェノールを連結するスペーサー部分について調査した。基本となるC7ジケトンからC5ジケトン、C5モノケトン、C3モノケトンタイプの誘導体を設計、合成、評価した。 分子設計としてC7リンカーでの結果からsp3炭素の存在が水溶性、アミロイド凝集特性活性共に極端に低下することを明らかにしており、すべての炭素をsp2にする必要があった。そのため、C5,C3リンカーにおいても同様にsp2炭素のみで構成し、ケトン、オレフィンからなるスペーサーを導入した。実際の合成では、アルドール縮合を選択し、最適な条件検討によって設計した分子を40種類程度得ることに成功した。 次に合成した分子の水溶性試験、アミロイド凝集体阻害実験を行った。その結果、アミロイド凝集体阻害と水溶性にはあまり相関がないことを明らかにした。よって薬物動態の面から水溶性の高い化合物を薬剤候補として選択することが可能となり、アルツハイマー病治療薬としても可能性が開けたと考えている。特にC5モノケトンならびにC5ジケトン(2,5,3',4'-テトラヒドロシキジフェニル)誘導体がよい結果を与えた。 さらに2つの候補化合物について、神経細胞PC12に対する毒性試験を行った所、水溶性の向上が毒性を低下させた。およそ1 mM (IC50) レベルであった。さらに活性酸素除去試験においても水溶性の向上が活性酸素除去能を極端に向上させることがわかり、理想的な薬剤であることを明らかにした。水中、血中での分子安定度は天然クルクミンを凌駕する結果も得られた。
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